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東芝メモリの成毛康雄社長は12日、都内で開かれた半導体製造技術の展示会「セミコン・ジャパン」で講演した。7月に建設を始め、2020年の本格量産を目指す北上工場(岩手県北上市)の新製造棟について「19年に少なくとも1ラインで生産を始める」と明らかにした。メモリー市況については「少し需給バランスが崩れている」との認識を示した。

北上工場は主力の四日市工場(三重県四日市市)で開発したフラッシュメモリーを量産する拠点とする計画。東芝メモリはフラッシュメモリーの市場成長率を年率40%程度とみており、北上工場は「市場成長率をキャッチアップするのに必須」(成毛社長)の拠点だ。建屋は現在骨組みの半分程度が完成しており、19年秋までには完成する見通し。2本目以降のラインの生産開始時期は市場動向を見て決定する。

メモリーの需要が想定に比べ伸び悩んでいる要因として成毛社長はデータセンター向けを理由にあげ、「伸びに期待しすぎていた」と話した。「19年後半には再び拡大する見込み」という。

同社長は人工知能(AI)やあらゆるモノがネットにつながる「IoT」に関する需要も予想に比べると伸びが緩やかだとの見方も示した。スマートフォン(スマホ)向けの需要については「出荷台数は微増の見込みだが、(1台あたりの)メモリーの搭載容量が増加し、需要は押し上げられる」とした。

フラッシュメモリーを巡っては、記憶素子を縦に積み上げ容量を増やす積層化を各社が競っている。鍵を握るのが積み上げた素子をつなぐ穴を開けるプロセスだ。最先端の96層製品について成毛社長は「2回にわけて穴を開けている」と明かした。1回で穴を開ける方法を採用したとみられる韓国サムスン電子とは別の技術のもよう。1回で開ける技術に比べ「スループット(単位時間あたりの処理能力)が上がる」と利点を強調した。

1つの素子に従来の3ビットではなく4ビットの情報を記録する「QLC」の技術も紹介した。東芝メモリは同技術を使って記憶容量が1.33テラ(テラは1兆)ビットと世界最大容量のフラッシュメモリーを開発済みだ。通常に比べデータの遅延を抑えた新しいフラッシュメモリー技術も紹介した。(龍元秀明)



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