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少額投資非課税制度(NISA)が新しくなり丸1年が過ぎた。投資になじみが薄かった家計の間でも口座を開く動きが広がり、認知度は格段に高まった。2年目以降はブームから定着へ向けた真価が問われる。貯蓄から投資の流れをさらに太くしていきたい。

金融庁によると、NISA口座数は2024年9月末に約2508万になった。対象となる18歳以上の4人に1人が口座を持つ計算だ。20〜80代の幅広い年代に利用が広がり、40代以下の割合がほぼ半分と存在感を増している。

24年1〜9月には14兆円弱の家計マネーがNISAを通じ投資信託や株式に回った。旧制度だった23年1〜9月比で3倍強だ。14年の制度開始以来の累計で24年に50兆円を超えた公算が大きい。新制度では1人1800万円まで非課税投資枠が広がり、期限を気にせずに運用できるようになった。

24年は日本株が大きく変動した1年でもあった。34年ぶりの最高値更新の半年後には史上最大の下げ幅を記録する場面もあった。

それでも初心者を含め個人投資家が過度に動揺することはなかった。主要証券10社の急落局面の集計では売却額は購入額を下回る。慌てて株や投信を手放さず、長期目線で資産形成を続けるNISAの本旨が理解されているとして評価できる。一方で2年目以降に向けた課題も明らかになった。

口座開設ペースは足元で鈍化している。参加者の裾野を広げるには、物価上昇時の投資の有効性や非課税運用の利点を一段と多くの人に理解してもらう必要がある。

投資先の偏りも目立つ。世界株全体や米国株に連動する外国株投信に人気が集中する。円安・米国株高の流れが変われば二重の価格下落リスクを抱える。年齢や収入に照らし、債券など株式と値動きの異なる資産も組み入れた投信を増やす選択も考えたい。

それには分散投資の正しい理解が欠かせない。官民合同で設立した金融経済教育推進機構(J-FLEC)には活動拡充を急いでもらいたい。投資熱に乗じた詐欺の被害に遭わないためにも金融教育の役割が重要だ。そんななかインサイダー取引など金融業界の緩みが目に付くのは論外だ。

何より求めたいのが日本企業による稼ぐ力の不断の向上努力だ。配当や値上がり益の形で企業の富が家計に分配されて初めて「資産運用立国」の歯車が回り始める。



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