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 EVは電力1キロワット時あたり7キロ走り、1台の年間平均走行距離を7000キロと想定。国内の乗用車登録台数約6125万台(軽含む)がすべてEVに代わるとして、電力量は約612億5000万キロワット時。EVが15〜20%を占めると予想すれば、92億〜123億キロワット時とする計算だ。経済産業省によると平成28年度の販売電力量8997億キロワット時に占める比率は1〜1.4%となり、「消費量への影響はあまり大きくない印象」(林田氏)。

 さらに、電力業界では、EVがもたらす産業構造変化への懸念が大きい。EVは駆動システムが電池やモーターで、エンジンを持つガソリン車に比べて部品点数が少ないためだ。部品数が減れば製造時の消費電力が減り、収益の打撃になる見込みだ。

 勝野会長は「製造時の消費電力量が減少することに伴う販売電力量への影響のみならず、裾野の広い自動車産業の変革に伴う地域経済への影響が生じる可能性もある」と指摘する。実際、国内の電力量の3分の2は高圧という大工場やオフィスビルなど主に産業用だ。EVによる需要増とてんびんにかけ、期待よりも懸念が勝るのは必然だ。

 欧米や中国が打ち出すEV化の波の中で、電力業界は新たな収益源を見いだすことができるのか。「出遅れ」が指摘される日本の自動車メーカーとともに、採算性や将来性を見極める先見性が試される。

(経済本部 会田聡)



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