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元日に発生した能登半島地震で住宅地に甚大な液状化被害が出た石川県内灘町とかほく市の2市町に対し、国土交通省が対策工事に最大計800億円かかるとの試算を示したことが分かった。液状化では過去に例がない規模といい、工事完了には最長で10年かかる見通し。地震から12月1日で11カ月。2市町は住民説明会を開き、住民の合意を得て対策を進める。
2市町では元日の地震で、もともと海岸砂丘だった宅地で地盤が水平方向にずれ動く「側方流動」が広範囲で発生。内灘町の西荒屋地区やかほく市の大崎地区などを中心に、計千棟超の建物が大きく傾くといった被害に遭ったあったとみられる。
国交省は地震後、現地でボーリング調査などを実施。再発防止策として、ポンプなどで地下水位を下げる「地下水位低下工法」と、地盤を改良して強度を高める「地盤改良工法」の事業費をそれぞれ試算した。
内灘町の場合、被害が大きかった126ヘクタールで地盤改良工法を採用した場合は最大600億円、地下水位低下工法なら最大220億円かかると算出。かほく市の場合は、被害が出た44ヘクタールに地盤改良工法を実施すれば最大200億円、地下水位低下工法では最大90億円としている。いずれも着工から工事完了までに5?10年かかるという。
事業費の97・5%は国の液状化対策事業や地方交付税などを充てることができる。市町の負担は2・5%にとどまるが、欠かせないのが「一定の住民合意」(両市町の担当者)だ。内灘町ではすでに11月下旬から住民説明会を始め、エリアごとに適切な工法を選定する。かほく市でも近く説明会を始める。
ただ、「地下水を抜くと地盤沈下の恐れや井戸が枯れるといった影響も考えられる」(かほく市の担当者)ため、2市町とも各工法の問題点などを見極める実証実験を来年度にも行う予定。着工は早くて令和9年度とみているが、内灘町の川口克則町長は「工事を実施する場合、住民の8割程度の合意は必要」と指摘しており、合意形成の進捗状況によっては着工が遅れる可能性もある。
地盤が水平方向に動いて土地の境界にずれが生じている問題もあり、法務局などの協力も必要となる。今後の工事について、馳浩知事は「地権者や地域として判断することになる」としつつ、「県としても生活再建にしっかり寄り添って支援したい」と述べた。