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食料危機の恐れがある場合に、政府が農家に生産拡大を要請できる新法「食料供給困難事態対策法」が4月1日に施行されるのを前に、同法をめぐって「食料が配給制になる」などのデマがSNS(交流サイト)上で横行、農林水産省は4日、同省サイトで注意喚起を強化した。
新法は、食料危機の恐れがある場合、政府が事態の深刻度に応じて農家に生産計画の届け出や生産転換などを指示できると定めた。実効性を確保する措置として、指示に反して計画を届け出ない場合は20万円以下の罰金とするなどの規定がある。
ところが、SNS上で「食料の配給制度が平時から始まる」「国が増産を指示し、増産しなければ罰金が科される」といったデマが横行。農水省は1月上旬からサイト上でQ&Aとして説明、今月4日から「【重要】以下のような内容・情報は正しくありませんので、ご注意ください」などと注意喚起を強化した。
たとえば「国の増産指示や罰金」というデマに対しては「指示は『生産計画』の作成・届出であり、増産は強制しません」と明示。「罰金は計画を届出しない場合に限って科されるもので、増産の有無は関係しません」と説明している。
「配給制」については「この法律で新たに配給に関する制度が措置されたわけではありません。特に深刻な事態に至った場合に限り、他の法制度の下で実施するものです」としている。
農水省は1月28日、新法の具体的な運用を定めた基本方針案を公表。米や肉類(牛肉・豚肉・鶏肉)のほか、大豆、小麦、砂糖、鶏卵、液卵・粉卵、植物油脂、菜種・パーム、テンサイ・サトウキビ、生乳、牛乳・乳製品の12品目を「特定食料」に指定し、国内供給量が2割以上減少し価格高騰が発生した場合などを「食料供給困難事態」と規定。必要に応じて政府が農家へ生産計画を提出するよう指示する。
一方、農業関係者からは「農産物の価格が安い中、生産資材や燃料は値上がりする一方で、農業はすでに目の前が有事だ。農産物の価格を『適正』にしてもらわなければ、本当の有事に協力などできない」との声も出ている。