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 堺市南区の「泉北ニュータウン(NT)」地域で実証運行中の、人工知能(AI)を活用したオンデマンドバスの利用が好調だ。高齢化が進むNTの住民の利便性向上などを目指すもので、当初は低調だった利用が今では倍増。1日からエリアを拡大し、一部期間を空けて2026年10月まで計17か月にわたって運行する。(北口節子)

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泉北高速鉄道泉ヶ丘駅前を走行するオンデマンドバス(堺市南区で)
泉北高速鉄道泉ヶ丘駅前を走行するオンデマンドバス(堺市南区で)

 実証運行は堺市と南海電鉄、南海バスが22年度に始めた。乗客の定員8人のワンボックス車を使った乗り合い方式で、スマートフォンのアプリや電話で乗降する停留所の予約を受けて運行する。時刻表や決まった経路はなく、予約や道路の混雑状況などに応じてAIが選んだ最適ルートを走る。

 運賃は一律300円。住宅地や飲食店、病院、子育て施設など既存のバスがとまらない場所にも停留所を置くことで、免許を返納した高齢者や、車をもたない子育て世代にも利用しやすくした。

 初年度は2地区、29停留所で、約2か月間の期限付きで運行した。当初は利用が伸び悩んだが、23年度に11地区、50停留所に拡大し、期間を4か月に延ばしたことで改善。1日平均の利用者数が28人と、前年度から倍増した。

運転手に予約者の情報などを伝える機器や運賃箱が搭載された車内(堺市南区で)
運転手に予約者の情報などを伝える機器や運賃箱が搭載された車内(堺市南区で)

 利用者に行ったアンケートでも、「外出機会は増えると思う」(約96%)、「日頃の移動手段と比べて便利」(約97%)など好評を集めたほか、停留所の新設を求める声も寄せられた。

 それを受けて今回、新しい停留所に南区役所や小学校、飲食店などを設定して計81か所に増やした。さらに、停留所を設置した商業施設などの15事業者から協賛金計約120万円を集めたほか、乗客がそれらの施設などを利用する際の割引サービスも導入。将来の事業化に向けて収益の安定化につなげる狙いだ。

 各地のNTは開発の当初から、公共交通を利用する前提で「徒歩で暮らせる」環境を目指して整備された。都市とつながるベッドタウンとして発展したが、多くのNTが街開きから半世紀以上が過ぎ、住民の高齢化や減少が目立っている。

 泉北NTも同様で、高齢化率は4割近くに達する。丘陵地域で起伏が多く、高齢者には、既存のバス停留所までの短い移動も負担となる点が課題として浮上していた。

 国土交通省によると、民間事業者が路線バスを運行する地域で、利便性をさらに高める目的でデマンド交通が導入される例は、全国でもまだ多くないという。市の担当者は「住民の移動を地域で支える仕組みを作り、子育て世代にも新しく選ばれる泉北NTになれば」と期待。南海電鉄の桐山朋子執行役員は「路線バスや鉄道網のすき間で、外出が難しい人の助力になれるようにしたい。収益化が課題だが、持続的な運行を模索したい」と話した。

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