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育成に消極的
労働市場を活性化するため、政府は学び直し支援に力を入れ、22年10月に5年間で1兆円を投じる方針を打ち出した。昨年10月からは、週20時間以上働く雇用保険の加入者を対象に、国が指定する教育訓練の受講料の補助率を最大70%から80%に引き上げた。
ただ、非正規労働者向けの取り組みは進んでいない。厚労省が23年に実施した調査では、労働者の技能向上のため企業が行う研修やセミナーの実施率は、正社員が71%なのに対し、非正規は28%だった。非正規は短期間で離職する可能性があり、企業側が人材育成に消極的なことが背景にある。
非正規労働者が学びやすい環境をどう整備するかも課題となっている。非正規の87%は「向上したい能力がある」と回答したが、学習など「自己啓発」に取り組む人の割合は、19%にとどまった。自己啓発を行うのが難しい理由に、家事や育児、費用負担の大きさを挙げる人が多かった。
夜間や休日も受講
こうした声を受け、厚労省は24年度、非正規労働者が受講しやすい職業訓練のコースを新設。これまではハローワークで平日昼間に行われるものが中心だったが、平日夜間や休日にもオンラインなどで学べるようにした。
ソフトウェア開発などの「デジタル」と「営業・販売・事務」の2分野を、希望者は5000円で計150時間受講できる。同省は今後、受講者の賃上げや正社員化などの効果を検証し、分野拡大も含め本格運用につなげる考えだ。
パーソル総合研究所の小林祐児・上席主任研究員は「学び直しの機会の隔たりは生涯賃金の格差にも直結するため、非正規ほど必要性が高い。企業は研修を充実させるだけでなく、受講が待遇改善につながることを示して意欲を高める必要がある」と話している。