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26日の日本市場では株式が大幅に下落している。トランプ米大統領が連邦準備制度理事会(FRB)のクック理事解任を表明したことで米株先物が値下がりして重しになった。円は一時大幅高。
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主要株価指数は一時1%超下落した。クック理事解任意向を受けてFRBの独立性が脅かされるとの見方からドル資産への売りが先行した。米利下げ加速観測も加わり、円は対ドルで一時146円台まで値上がりした。これを受けて電機や自動車といった輸出関連株が下がった。エヌビディア決算を27日に控えていることも株式の様子見に拍車を掛けている。債券相場は小幅安(金利は上昇)。
クック理事(右)とパウエル議長 Photographer: Al Drago/Bloomberg
ジャクソンホール会合でパウエルFRB議長がハト派化したのに続いて、トランプ氏の意向は金融市場の米利下げ観測を後押しする要因になる。米利下げの有無や幅に影響を与えるインフレや雇用指標は週末から出てくる。
ナショナルオーストラリア銀行(NAB)ストラテジストのロドリゴ・カトリル氏(シドニー在勤)は、クック理事即時解任はドルにマイナス材料との見解を示した。米連邦準備制度の独立性に懸念を強め、トランプ氏の見解に同調する理事が4人になる可能性があるとしている。
26日の国内株式・為替・債券相場の動き-午後1時38分 東証株価指数(TOPIX)は前日比0.9%安の3078.31
日経平均株価は0.9%安の4万2415円07銭 円は対ドルでニューヨーク終値比ほぼ横ばいの147円73銭 一時0.5%高の146円99銭まで上昇
長期国債先物9月物は一時前日比14銭安の137円36銭
新発10年債利回りは一時0.5bp高い1.62%に上昇
株式
東京株式相場は反落。トランプ大統領のクック理事を解任意向を受けた円高で輸出関連株が値下がりして、医薬品への関税についても迅速に進めると表明したことを受けて医薬品も大きく下げている。
インベスコ・アセット・マネジメントの木下智夫グローバル・マーケット・ストラテジストは、トランプ大統領によるクックFRB理事の解任表明は「中央銀行の独立性に対する信頼を揺るがすイベント」と指摘。過度な金融緩和によるインフレ圧力によって、ドルの価値が損なわれるリスクがあるとし、ドル安は日本株の重しになると話した。
関連記事:トランプ氏のFRB理事解任の意向、ドル安で日本株重し-インベスコ
輸出株が円高の影響を受ける中、TOPIX値下がり寄与度は電気機器指数が最も大きい。自動車や銀行、商社も安い。
ヴァンエック・アソシエーツのクロスアセット投資調査担当シニアアソシエート、アンナ・ウー氏は、円高は株式の重しになりボラティリティを高める可能性があると述べた。市場では通常、こうしたニュースは FRBの独立性に対する脅威と受け止められ、不確実性を引き起こすとしている。
個別では日産自動車が大幅下落。メルセデス・ベンツ年金信託が1億4010万株を売却することが判明した。ブルームバーグが入手した条件によると、売り出し価格は1株341.3円と前日終値から5.98%のディスカウントとなる。メルセデス・ベンツの年金信託は日産株を完全に手放す見通しだ。
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為替
円は対ドルで一時急反発。トランプ大統領がFRBのクック理事を即時解任する意向を表明し、FRBの独立性に対する懸念や利下げ観測からドル売りが強まった。
オーストラリア・コモンウェルス銀行のストラテジスト、キャロル・コング氏(シドニー在勤)は、「米連邦公開市場委員会(FOMC)の政策決定に影響を及ぼそうとする、トランプ大統領によるまた一つの試みだ」とし、クック理事を解任すれば「トランプ氏は利下げに前向きな人物を後任に充てる機会を得るため、ドルにとってネガティブ要因だ」と話した。
ブルームバーグ・ドルスポット指数は一時、ニューヨーク終値比0.3%低下。フランスの政局不安から前日に売られたユーロも対ドルで反発した。
円は対ドルで一時0.5%高の1ドル=146円99銭まで上昇。その後はドルに買い戻しが入り、147円台後半に戻している。米紙ワシントン・ポストは、クック理事が辞任しない意向を表明したと同氏の声明を引用して報じた。
ガマ・アセット・マネジメントのポートフォリオマネジャー、ラジーブ・デメロ氏は、トランプ大統領によるクック理事の解任表明はクーグラー理事の突然の辞任に続いて「中央銀行の独立性に対する政治的干渉の重大な進展を示す」と指摘。「こうした行動は制度的信頼性を目に見える形で損ない、ドルに持続的な下押し圧力をかける可能性が高い」とみている。
債券
債券相場は小幅下落。米長期金利の上昇に加え、この日の超長期債対象の流動性供給入札の結果が弱かったことを受けて売りが優勢になっている。
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三菱UFJアセットマネジメントの小口正之エグゼクティブ・ファンドマネジャーは、流動性供給入札は事前の市場予想の中では最も弱かったと語った。月末でインデックス投資の長期化目的の買いが入っているとは思うが、「それでも需給の悪さと地合いの悪さが勝っている」とした。
ニッセイアセットマネジメント戦略運用部の三浦英一郎専門部長は、日本銀行が10月の利上げに向けて地ならしを行ってくるとみており、金利は再び上昇局面に入ると予想した。前週末の米長期金利の大幅低下や株高を受けた年金基金のリバランス買いへの期待など好材料に対する反応も鈍く、「投資家は慎重だ」と述べた。



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