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毎秒60億トンをぺろり…。
天文学者らは、周囲のガスと塵を驚くべき、しかも記録破りのスピードで吸収している放浪惑星(自由浮遊惑星)を発見しました。
こうした孤立した惑星は、恒星の重力に束縛されることなく宇宙を自由に漂い、異常な振る舞いを見せることがよくあります。
今回発見された放浪惑星は、地球から約620光年離れたカメレオン座の中に存在。まだ形成の初期段階にあり、誕生過程で残ったガスと塵から養分を得ています。今回の発見に関わった科学者チームは、「Cha 1107-7626」と名付けられたこの惑星が、毎秒60億トンという記録的なペースで物質を吸収していることを明らかにしました。この詳細は、米国時間10月2日に学術雑誌『The Astrophysical Journal Letters』で発表された論文にまとめられており、これまで観測されたどの惑星の成長ペースよりも速いといいます。
吸収スピードはわずか数か月前の「8倍」に
放浪惑星が形成される方法は2つあります。1つは、恒星の周りで生まれた後に、恒星系内のほかの天体との相互作用によって追い出されるケース。もう1つは、ガスや塵の雲が崩壊した後に単独で形成されるケース。放浪惑星の周囲には、形成過程の残骸からなる円盤が存在します。成長段階にある惑星は通常、この円盤に含まれるガスや塵を、「降着」と呼ばれるプロセスで取り込みながら成長します。
Cha 1107-7626の場合、降着のスピードは一定ではありません。今回の研究に関わった天文学者らは、この惑星を長期にわたって観測した結果、今年の8月には、わずか数か月前と比べておよそ8倍のペースで物質を取り込み始めていたことが明らかになりました。
イタリア国立天体物理学研究所(INAF)のパレルモ天文台の天文学者で、今回の研究の筆頭著者でもあるVíctor Almendros-Abad氏は、声明でこう述べています。
これは、惑星質量の天体としては観測史上最速の降着現象です。惑星は静かで安定した世界だと思われがちですが、今回の発見により、宇宙を自由に漂う惑星質量の天体がエキサイティングな場所になりうることがわかりました。
「磁気活動」が異常な成長に関係か
この惑星はまだ若いながらも、質量は木星の5〜10倍とすでに巨大です。研究チームは、この異常な成長が惑星の磁気活動によるものとみられることを突き止め、磁力によって周囲の物質がものすごいスピードで円盤に降り注いでいると考えています。
惑星を取り巻く円盤の化学的性質も、降着の過程で変化しているようで、研究チームは、以前は検出されなかった水蒸気を検出しました。こうした化学的な変化はこれまで恒星でしか観測されませんでしたが、今回の研究により、恒星と比べて質量が小さい惑星であっても、降着を加速させるだけの十分な磁場を持つ可能性があることが示唆されました。
ヨーロッパ南天天文台(ESO)の天文学者で、今回の研究の共著者であるAmelia Bayo氏は声明でこう語っています。
惑星が恒星のように振る舞うという考えは驚嘆すべきもので、私たちが生きる地球以外の惑星が、誕生初期段階でどのような姿をしているのか、想像をかき立てられます。
宇宙のスケールには驚かされるばかり。この爆発的な食欲、一体どれくらいの期間続くのでしょうか。



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