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前田健太投手(前ヤンキース傘下3Aスクラントン)が来季、楽天イーグルスでプレーすることが決まった。巨人なども獲得に動いていたが、総額4億円(推定)の2年契約が合意に達した。日米通算165勝を挙げる右腕の日本球界復帰の舞台裏と、完全復活への鍵とは。広島カープ、メジャー時代を通じて前田を取材してきたMLB担当の山田結軌記者が綴った。〈全2回の前編/後編を読む〉 【写真】「デコピンも困惑顔…」「これは迷作すぎる」大谷翔平もお気に入りのマエケン画伯作「デコピンとハイタッチする大谷」を見る ◆◆◆ マエケンが日本で再び、投げる。仙台が新たな挑戦の街だ。 「メジャーに上がれなかったのは悔しかったです。正直、ここ数年で一番自信を持ってマウンドに上がれる最後の1、2カ月だった。いい状態、自信を持ってシーズンを終わることができた。自分でも、よくここまでピッチングを戻すことができたな、と思います」 シーズンを終えた前田は、そう語っていた。その言葉には一定の手応えと2026年への希望がにじんでいた。
「投手・前田健太」の崩壊
どん底も味わった1年だった。 5月初めにタイガースからDFAというメジャー40人枠から外される措置を受けた。つまり、戦力外通告だった。タイガースとは2年契約の2年目、米球界は10年目を迎えた春だった。渡米後初めて開幕ローテーション投手を外れ、中継ぎに配置転換。7試合で防御率7.88と苦しんでいた。コントロールが定まらず、力を入れて投げても直球の球速は90マイル(約145km)に満たないこともあった。投球フォームに違和感を感じながら投げること自体が不安だった。先発投手、有望な若手が揃うタイガースの投手陣で居場所を失うのは、時間の問題だと見えていた。 タイガース在籍時には、データや動作解析の担当者からスイーパーの多投と体を横に振るようなフォームを求められた。しかし、それによって前田が長年、信じてきた感覚からはどんどん遠ざかった。
「メンタルもめちゃくちゃでした」
「ずっと違和感があった。違う、違う、というのが続いた」 チームから信頼されていない苦しさも精神的に堪えた。 「もうメンタルもめちゃくちゃでした。自信をなくしましたね。初めての経験、感情でした」 日本とメジャーで築き上げた「投手・前田健太」が崩壊していた。 復活を目指す厳しい道が始まった。5月中旬にカブスとマイナー契約。移籍後はフォーム修正に着手し「僕は縦、斜めくらいに体を使う方がいい感覚がある。コーチにもそれを相談しました」。横ぶりから、縦ぶりへの回帰。修正は噛み合い、復調の実感が生まれた。



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