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前田健太投手(前ヤンキース傘下3Aスクラントン)が来季、楽天イーグルスでプレーすることが決まった。巨人なども獲得に動いていたが、総額4億円の2年契約が合意に達した。日本球界復帰の舞台裏と、完全復活への鍵とは。広島カープ、メジャー時代を通じて前田を取材してきたMLB担当の山田結軌記者が綴った。〈全2回の後編/前編も公開中です〉 【写真】「デコピンも困惑顔…」「これは迷作すぎる」大谷翔平もお気に入りのマエケン画伯作「デコピンとハイタッチする大谷」を見る ◆◆◆ 「マエケンは終わった」 春先の不調とタイガースからの戦力外。実際のピッチングを見ることのない日本のファンの多くが、30代後半に差し掛かるベテランは『もう無理だろう』と“限界説”を囁いても無理はない。 実際にカブスとのマイナー契約直後は、前田本人も「ストライクが入る確率の高い球種を選んで、打ち損じを願うほかなかった」と振り返る、野球人生で最悪の状況だった。
心無いメッセージ「つい見てしまって…」
KOされ、炎上すれば、数字の結果だけでネットニュースの“餌食”になった。前田とて生身の人間。ネットの書き込みや自身のSNSに届く心無いメッセージに心を痛めていた。 「見なきゃいいのは、分かっているんですけどね。つい見てしまって……。調子が良ければ、見てろよ、結果で見返す! と思えるんですけど、それも思えなかった」 球速低下は、年齢による衰え、と決めつけられた。米国から遠くにいる日本のファンに前田が地道に取り組むフォーム修正は知る由もない。マイナー戦を取材するメディアもほとんどいない。だからこそ、結果で示すしか術はなかった。 体の縦ぶりフォームを思い出した7月以降、球速は再び150kmを超え、スライダーは切れを取り戻した。 「年齢でいろいろ言われますけど、日本に最後いたときよりもレベルアップできている。右打者にツーシームも投げるし、チェンジアップも投げる。投球の幅は広がっている」
ヤンキース最後はメジャー「昇格目前」
水面下では、メジャーの投手陣の不測の事態には、前田が昇格候補になっていた。ヤンキース関係者は「投手起用では、基本方針は前田をローテーションに入れたままにして、必要があればすぐ昇格できる状態を保つことでした」と明かす。さらにベテラン右腕の取り組む姿勢についても「9年間メジャーで投げたあとにマイナーで投げるのは精神的に厳しい面もありますが、持てる力をすべて注ぎ込む姿勢で献身した」と評価していた。 前田自身は、メジャー再昇格を目指しながらも、2026年からの日本球界復帰を見据え、自分本来の投球を取り戻すことに集中していた。 ヤンキース3Aスクラントンはマイナーの後期リーグ東地区で優勝し、ポストシーズンへ進出。フロリダ州で開催されたマーリンズ傘下3Aジャクソンビルとの対戦では1勝2敗で敗退した。仮に勝ち抜けた場合、ラスベガスで行われる1試合制のマイナーリーグ優勝決定戦では、前田が先発予定だった。登板はかなわず、敗退したフロリダ州から帰国準備のためにロサンゼルスに向かった。