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ノーベル委員会は10日、2025年のノーベル平和賞をベネズエラの野党指導者マリア・コリーナ・マチャド氏に授与すると発表した。
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この決定を、常に自らが注目の中心であることを好むことで知られるトランプ米大統領がどのように受け止めるかは、予測が難しい。
トランプ氏にとって、ノーベル平和賞が今回も自分以外の人物に授与されたことは、エリート層からの度重なる拒絶に加わる新たな屈辱として感じられる恐れがある。
問題は、同氏がその憤りをどう表すかだ。
トランプ氏はノーベル賞受賞への強い願望を隠してこなかった。自らの介入によって「7つの戦争を終わらせた」と主張し、これをたびたび引き合いに出してきた。先月の国連総会での演説でも、自分がノーベル平和賞を受けるべきだと「皆が言っている」と語った。
ノーベル委員会の事務局長クリスティアン・ベルク・ハルプヴィーケン氏は、「トランプ氏の平和賞獲得キャンペーンは並外れている」と、10日の発表後にオスロでブルームバーグ・ニュースに語った。
世界的に知られ、卓越の象徴とされるノーベル賞は、ブランドに強いこだわりを持つトランプ氏にとって特別な意味を持つ。
この執着が芽生えたのは、オバマ元大統領が2009年、就任からわずか数カ月で同賞を受賞した時だった。
トランプ氏にとって、この受賞は出来レースの象徴だった。自身がいくら努力しても受け入れようとしない国際体制の内部にいる者だけに、名誉や権威が与えられると感じられた。
そのいら立ちは、大統領に就任して以降、さらに深まっている。
トランプ氏は大統領1期目に、イスラエルおよびアラブ諸国の指導者との親密な関係を活用し、中東地域で関係正常化を進める一連の合意をまとめた。
しかし世界は、国際秩序を軽視する同氏の姿勢や、大統領選敗北を巡る陰謀論への傾倒により、その業績よりもむしろ破壊的な側面に注目するようになった。
政治的に孤立していた数年間と複数の刑事訴追を経て、トランプ氏の承認欲求はいっそう強まったように見える。政権復帰後は和平合意の追求を執拗に続けている。
今週発表されたイスラエルとハマスの間の人質解放合意は、2年にわたる流血の後にようやく実現した真の成果であり、トランプ氏のノーベル平和賞受賞に向けた決定打になるはずだった。
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しかし、ノーベル委員会が選んだのは、民主主義の権利促進に尽力してきたベネズエラの反体制指導者マチャド氏だった。授賞理由は「たゆまぬ努力を続け、独裁から民主主義への公正で平和的な移行を実現しようと闘ってきたこと」。
トランプ氏がマドゥロ政権への圧力を強めている現状を踏まえると、極めて戦略的な選択とも言える。
発表の数時間前、トランプ氏は今回も受賞を逃すことを察していたようだ。大統領執務室で記者団に対し、自身の外交努力は純粋に世界平和への関心から生まれたものであり、受賞を期待していないと主張。ノーベル委員会が誰を選んでも「構わない」と述べていた。
しかし世界は、受賞を逃したトランプ氏がこの結果をどう受け止めるかに注目している。
最初の試金石となるのは、今後数日内に予定されるエジプトとイスラエル訪問だ。平和合意を祝うためのこの訪問でトランプ氏が、実施初期の重要局面への興味を失う可能性もある。
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ノルウェーでは、トランプ氏が報復的に関税を課したり、同国の政府系ファンドを標的にしたりする可能性に備える動きもある。といっても、トランプ氏自身がオスロに対して制裁を示唆したことはない。
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より広く見れば、世界の指導者たちは、ノーベル賞落選がトランプ氏を共同外交から遠ざけるきっかけになるかどうかを注視している。
原題: World Awaits Blowback as the Nobel Slips From Trump’s Hands (1)(抜粋)
— 取材協力 Heidi Taksdal Skjeseth and Ott Ummelas



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