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トランプ米大統領は25日、クック連邦準備制度理事会(FRB)理事が住宅ローン申請書類を巡り不正を働いたとの大統領側近の指摘を受け、クック理事を即時解任する意向を表明した。これに対し「辞任するつもりはない」と反論したクック氏だが、どのような人物なのか。以下はその主な経歴だ。
理事の任期
クック氏は7人で構成されるFRB理事の1人。連邦準備制度12地区の連銀総裁のうち5人(うち1人は常に投票権を持つニューヨーク連銀総裁)と共に連邦公開市場委員会(FOMC)メンバーとして、金利政策を決定する。
バイデン前大統領により2022年に指名され、FRB創設から100年余りにわたる歴史の中で初の黒人女性理事となった。当初の任期は24年までだったが、その後バイデン氏に再任され、現在は38年までの14年任期を務めている。
クックFRB理事 Photographer: Anna Rose Layden/Bloomberg
米金融当局者としては一般的な経済学博士号を取得している。FRB理事に指名される前はミシガン州立大学で経済学と国際関係論の教授を務めていた。自身の 研究分野として、各国・地域の中央銀行や金融危機、人種間の経済格差、イノベーションが経済に与える影響などを対象としてきた。
また、オバマ元政権で大統領経済諮問委員会(CEA)の委員を務めたほか、00年代初頭には財務省に勤務した経験もある。
投票履歴
クック氏がFRBに加わったのは40年ぶりとなる積極的な利上げが始まった時期だった。それ以来、FOMCの各会合で多数派およびパウエル議長と足並みをそろえて投票しており、今年これまでに開催された5会合でも金利据え置きに賛成票を投じている。
依然として高水準のインフレを警戒する一方、雇用者数の伸びの 大きな減速が示された7月の雇用統計について「懸念すべき内容だ」と指摘。米経済の 転換点を示唆している可能性があるとの見方を示した。
9月の次回会合で利下げを支持するかどうかについて、直近では発言していない。市場関係者の間では利下げ観測が強まっている。
険しい道のり
クック氏は米上院による承認過程で、共和党主導の強い反発に直面した。トゥーミー元上院議員やハガティ上院議員らは、研究実績が人種政策に偏り過ぎているほか、金融理論に関しても不十分だと批判した。
ハガティ氏は経歴詐称の疑いがあると非難し、右派メディアなどでも同様の論調が広まったが、クック氏は強く否定した。
22年、上院本会議では党派に沿った投票結果となった。賛成50、反対50となった後、最終的にはハリス前副大統領が上院議長(当時)として決定票を投じた。
関連記事: 米上院本会議、リサ・クック氏のFRB理事指名を承認-黒人女性初
生い立ち
クック氏はジョージア州出身で、アフリカ系アメリカ人公民権運動に関わった家族の下で育った。叔父のサミュエル・デュボイス・クック氏はマーティン・ルーサー・キング・ジュニア牧師の同級生で、著名な政治学者でもあった。
米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)への論評「It was a mistake for me to choose this field(この分野を選んだのは間違いだった)」では、共同執筆者のアンナ・ギフティ・オポクアジェマン氏と共に、黒人女性が経済学を専攻する上で直面する困難を訴えている。23年に経済学博士号を授与された計492人の女性のうち、黒人女性はわずか 4人にとどまったという。論文の引用などでの差別が残るため、多くが学界に残れないと指摘している。
また、黒人に対するリンチ殺人が特許申請に与えた影響に関する 論文も執筆し、殺害された人々が生きていれば特許数が増えていたはずだと主張している。
こうした分野での専門性が政策当局者の間で注目され、FRB理事就任後は人工知能(AI)、イノベーション、生産性など、新技術が労働力や経済に及ぼす影響をテーマに講演を行っている。
原題: Who is Lisa Cook, the Fed Governor Trump Is Trying to Fire?(抜粋)



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