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トランプ米大統領は、来年の20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)の議長国として、フロリダ州マイアミにある自身のゴルフリゾートで会議を 主催するのに当たり、誰を招待するか自ら決める姿勢を示している。
トランプ氏は26日、今年の議長国である南アフリカ共和国を招待しないとSNSに投稿した。南アフリカはこれまでも同氏の不満の対象となっていた。
首脳がG20メンバーの出席可否を決めることはもちろん、自分のホテルで会議を主催することは、長年の慣例に反する恐れがある。それでもトランプ氏は、慣習や多国間主義の秩序にほとんど配慮しないことをこれまでも示してきた。
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来年のG20サミットに誰が出席し、誰が招待されないのか、欠けた枠をどの国が埋めるのかが焦点となっている。トランプ氏の今回の言動は他のG20メンバーを苦境に追い込んでいる。侮辱を無視して参加するか、連帯を示して欠席し、関税や技術禁輸など同氏の報復を招くリスクを負うかという選択を迫られている。
ドイツのメルツ首相は27日、トランプ氏の投稿に関連してG20について、「これは世界に残された最も重要な多国間フォーラムの一つだ」と述べ、先週末にヨハネスブルクで開催されたG20サミットに米政府が出席しなかったことで「米国は重要性が高まっている世界の一角で影響力を不必要に手放した」と指摘した。
南アフリカは、マイアミのゴルフリゾート「トランプ・ナショナル・ドラル」で開催予定の首脳会議から締め出される可能性を覚悟していた。当局者の間では、米国が南アフリカをG20から完全に排除しようとするのではないかとの懸念も残る。
ただ、メンバー構成の変更にはG20各国のコンセンサスが必要だ。これは2023年のインド開催の首脳会議前にアフリカ連合(AU)が正式メンバーとして加わった際と同じだ。
トランプ氏は、南アフリカ政府が白人のジェノサイド(集団殺害)を実行しているという根拠のない主張を繰り返している。同国のラマポーザ大統領は5月のホワイトハウス訪問時に、この陰謀論を広めるのをやめるようトランプ氏の説得を試みたが、同氏は自身の主張を裏付けるとする動画を再生してみせた経緯がある。
南アフリカに対するトランプ氏の今回の扱いは、米国の国際的地位を国内政治のために利用するという大統領の傾向を浮き彫りにしている。南ア大統領府は声明で、「世界的なプラットフォームへの参加価値について他国から侮辱を受けることを快く思わない」とし、トランプ氏の発言に「遺憾」の意を表明した。
メルツ氏が示唆したように、トランプ氏の言動は悪影響を及ぼす可能性もある。グローバルサウス(新興・途上国)との関係をさらに損なえば、トランプ氏が反米的と非難してきた主要新興国「BRICS」の他の構成国である中国やロシアの思惑通りになりかねない。
米国がG20サミットへの参加を禁止する場合、どのように実行するのかは明らかでないが、出席を希望する当局者に国務省がビザを発給しない可能性は考えられる。トランプ氏の言動はいずれにせよ、他国政府への配慮をほとんど示さず、参加国を選別し、世界秩序を自分の思い通りに再編するという構想に合致する。
米国は先週、ウクライナでの戦争終結に向けた28項目の和平案の一環として、ロシアを主要8カ国(G8)の枠組みに復帰させる可能性を示唆し、ウクライナとその同盟国を驚かせた。G8は14年、クリミア半島の不法併合を理由にロシアが排除され、G7となっている。
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一方、トランプ氏の恩恵を受ける可能性のある国としては、長年G20入りを求めてきたポーランドが挙げられる。トランプ氏は9月、右派ナショナリストのナブロツキ大統領を来年のG20サミットに招待するとともに、同氏への称賛を惜しまなかった。
南アのケープタウンを拠点とするアフリカ・プラクティスの地政学リスク分析アドバイザー、ジヤンダ・ストゥールマン氏は、米国が議長国として気候、保健、平等といったテーマで歴代議長国が進めてきた取り組みをほごにする可能性があるとみる。
トランプ氏のG20関連行事は「対等な立場の者同士による会合として位置付けられたり運営されたりする可能性は低く、米国がこの枠組みを自国の目的にとって利用価値が限られていると見なしていることを示す場になるだろう」とストゥールマン氏は述べた。
英誌エコノミストの編集長を務めたジャーナリストのビル・エモット氏は、最悪の場合には多国間主義そのものが軽視され、トランプ氏と中国の習近平国家主席が議題を決める世界に傾く可能性があると指摘する。トランプ氏は4月に中国を訪問し、習氏と会談する予定だ。
エモット氏は、トランプ政権下の米国は一部の人々には「別れた後も避けて通れない威圧的な元パートナー」という悪夢のような存在に感じられるだろうとし、「さらに大きな悪夢は、米中が互いに争うどころか世界を分け合う決断をするG2の世界を彼が好むことが明らかになった場合だ」と語った。
原題: Trump Seeks to Shape G-20 to His Tastes by Ditching South Africa(抜粋)
— 取材協力 Iain Rogers



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