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日本経済新聞社と朝日新聞社は26日、生成AI(人工知能)を用いた検索サービスを提供する米新興パープレキシティを東京地裁に提訴したと発表した。AI検索によって記事を無断で収集・利用しているとして、著作権侵害行為の差し止めと各22億円の損害賠償を求めた。AI事業者の提訴は読売新聞社に続く動きで、海外のニュースサイトで先行していた訴訟の波が国内に広がった。
AI検索はインターネット上で公開されている内容を取得し、要約した文章の形で提供する。従来のキーワード型検索に比べてユーザーの利便性が高い半面、著作権で保護されたコンテンツを無断で使う恐れが指摘されている。日本新聞協会が懸念を表明し、国内外で提訴が相次いでいる。
訴状によると、パープレキシティはコンテンツの利用を拒否する技術的措置を無視し、日経と朝日のサーバーにアクセスして記事を収集。要約記事を生成・提供して著作物の複製や翻案、公衆送信を禁じた著作権法に違反した。
また、要約内容に誤りがあるなど記事と同一でないにもかかわらず、引用元を日経や朝日とすることで社会的信頼を傷付けて不正競争防止法にも違反したほか、営業上の利益を侵害したとしている。
両社はいずれも「許可なくAI学習などのためにデータの蓄積や複製をしてはならない」とする利用規約に違反したと主張。日経は無許諾で使われた中に日経電子版が有料会員にのみ提供している「ペイウオール」内の記事が含まれていた。朝日はヤフーニュースに提供した記事も許諾なく使われたとしている。
両社は記事利用の差し止めや要約した文章の削除などを請求。利用料相当額の一部に当たる10億円のほか、誤った生成物の提供により営業上の利益が侵害されたとして計22億円をそれぞれ求めた。
パープレキシティは米オープンAIの技術者が2022年に設立した。AI検索の有力なスタートアップとして注目され、米アマゾン・ドット・コム創業者のジェフ・ベゾス氏や米エヌビディアなどが出資。世界で月間1500万人以上が利用し、国内ではソフトバンクが提携して契約者向けにAI検索サービスを提供している。
一方で、権利侵害に懸念を示す報道機関は少なくない。米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)を傘下に持つダウ・ジョーンズなどは24年10月、著作権を侵害されたとしてパープレキシティを提訴した。係争中の同訴訟でパープレキシティは「検索機能は著作権法で保護されていない公開された事実情報に基づく」と反論している。
日本でも読売新聞東京本社、大阪本社、西部本社が7日、記事の無断利用が著作権侵害に当たるとして約21億円の損害賠償などを求めて提訴した。
日本経済新聞は26日午後、パープレキシティにコメントを求めるメールを送った。
日本経済新聞社広報室の話 多大な時間と労力を費やして作成した記事の無断利用は看過できず、虚偽の事実が表示される状況も生じている。野放図な著作権侵害に歯止めをかけ、民主主義の根幹を支える健全な報道を守る意義を訴えていく。
朝日新聞社広報部の話 当社のみならず日本新聞協会を通じて業界全体でも対応を求めてきたが、改善がみられないまま記事の無断利用が続いている。許諾を得ずに違法な利用を続ける生成AI事業者には引き続き対応を求めていく。



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