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営業マンの仕事は「一生懸命売りたい商品を売り込むこと!」だと、勘違いしていたのです。そんな状態ですから、お客さまのところに何度通っても、商品は売れるようにはなりませんでした。ついには、お客さまが居留守を使うようになり、会うことすら難しくなってしまったのです。

この状況になって、私は始めて自分が今まで営業の仕事だと思ってやってきたことが、間違っていたことに気がつきました。お客さまに敬遠されていては、営業どころではありません。このままではいけないと思い直し、営業のやり方を変えることにしました。

売り込まないことで学んだ2つのメリット

私はお客さまに、商品を売り込むことをやめることにしました。しかし、商品を売り込まなくなってから、正直、お客さまと話すネタがなくなってしまったのも事実です。それまで商品の話しかしていなかったのですから、当たり前です。そこで私は、こうした状況を打開するために、お客さまを訪問した時に、営業のスタイルを工夫するようにしました。簡単に言えば、「売り込むこと」をやめてみたのです。すると意外なことに、「売り込み一辺倒」の時よりも、「売り込まないスタイル」の方が、営業マンとしてのメリットがあることに気がついたのです。

1つめのメリットは、自分ばかり喋って売り込むのではなく、お客さまの話を聞く耳を持てるようになったおかげで、お客さまのニーズをより正確に掴めるようになりました。商品の情報以外で話す内容がないので、まずは相手の話を聞く側にまわるしかありません。話を聞くだけであれば、こちらも黙って聞いていればいいのですが、私は、それだけでは飽き足らず、どのように工夫すれば、もっと相手が気持ちよく話せるようになるかを徹底的に研究しました。

非常に簡単なことですが、「相づち」「うなずき」だけでもかなり効果が出ました。「ええ、ええ」「なるほど?」と言うだけで、お客さまは、気持ちよく話をしてくれるようになるのです。そして、時々相手の言葉を繰り返す「オウム返し」です。これらを組み合わせて、話しを聞くようにしたのです。

実際にA社でこんな会話がありました。

:御社のデジカメやビデオカメラ、よく売れているみたいですね。
お客さま:他社より、コンパクトなのがいいみたいだね。
:なるほど?。
お客さま:最近デジカメにしてもビデオカメラにしても、どんどん小型になる傾向だから、搭載している部品も今までと同じ性能で小型にしたいんだよね。
:なるほど?、そうですよね。
お客さま:そうそう、おたくの電子部品も小さくならないの?
:そうなんです、目下弊社もその努力をしておりまして。
お客さま:ハンダ付けする足(リード)の部分が横に出ていて邪魔だから、筐体(きょうたい)からはみ出ないようはできないの?
:はい、弊社でも他の部品では、そのような技術がすでにあります。
お客さま:実際に、新しい半導体はそういう構造になってきているよ。
:では次回、設計担当者連れてきますので、詳しくお話をさせてください。

?

と、話しを聞いているだけで、いろいろと新たなニーズの開拓に繋がることがわかったのです。実際に、この話は約1年かけて進み、社内で製品化され、業界初の電子部品として採用されることになったのです。


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