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そして、もう1つの役割は「肩書に恥じないように自らの人間的成長をはかること」です。こちらは忘れられがちですが、非常に大切なことです。ビジネスマンとしての成長は、何と言っても人間的成長のうえに築かれるものなのです。

仕事のうえでの成長というものは、経験を積み重ねていけば、たいていは誰でもできます。10年も仕事をしている人が、新入社員に仕事のうえで負けることは、まずありえません。成長の速度に個人差はあるでしょうが、一生懸命に取り組んでいれば、必ずや仕事上の成長はできるものです。

人間的な成長は簡単ではない

ところが、人間的な成長は、そうではありません。自らが心を律し、日々心掛けていかなければ、なかなかできるものではありません。その人間的成長に比例して、部下がついてくると言っても過言ではありません。

にもかかわらず、多くのビジネスマンは往々にして、この人間的成長に重きを置くことはありません。仕事上の成長、成果ばかりに目を向けてしまいがちになります。そうすると、やがて部下はついてこなくなる。「あの上司の言うことは、正しいし、よくわかる。けど、あの人はどうも好きになれない。尊敬できない。親しみがないし、人間的に魅力がない」とみられるようになるのです。

そういう気持ちになるのが人情です。「アメリカでは……」と、すぐ言う人がいますが、それはアメリカで会社経営をするときに考えられたらいい。冨山和彦氏(経営共創基盤CEO)が、『Wedge』7月号で「米国と同じやり方を日本に適用しようとすると、プロ経営者は失敗する」(エリートが招いた東芝問題?経営者育成を抜本的に変えよ)と指摘していますが、そのとおりだと思います。

ここは日本です。正しいから、というだけで人々がついてくる国民性ではないのです。かつて植木等が歌った「スーダラ節」に「分かっちゃいるけど、やめられない」という歌詞があります。往々にして「理解できる」「正論だ」と頭ではわかっていても、「それを提案してきた上司が嫌いだから反対したくなる」ということは、皆さんも経験したことがあるのではないでしょうか。

「仕事はできても人間的には好きではない。だから仕事以外の場では絶対に一緒にいたくない」――。部下からそのように思われるとしたら、寂しいことだと思いませんか。「別に好かれなくてもいいんだ、なにが悪いのか」と思う人もいるかもしれません。

しかし、そういう人は、連続的に成果を上げなければいけません。もしも仕事で失敗したら部下は助けてくれないのです。誰も助けてくれなければ、それでおしまい。それですべてを失うことにもなるだろうと思います。管理職としての寿命は、短命に終わるのです。


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