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これまでグランドピアノと電子ピアノの感触を隔てていたのが、たたいたときに鍵盤が沈む「深さ」だった。ここが改良のポイントとなった。

グランドピアノは大きな音を出すために、鍵盤から支点部分までの距離が長く取っている。奥行きがあるのはそのためだ。これによって鍵盤もより深く沈む。今回の改良では、電子ピアノでも、鍵盤の端から支点までの距離を従来より長くした。

鍵盤の支点を遠くするほうが、よりスムーズに深く沈む(画像:「クラビノーバ」カタログより)

白鍵の端を押したときの深さは、アコースティックでも電子でも10ミリメートル程度で同じ。感触の違いを大きくしているのは、白鍵の奥側を押したときの鍵盤の沈む深さだった。

中型のグランドピアノで白鍵の奥側を押すと鍵盤が4.5ミリ沈む一方、ヤマハの従来機構の電子ピアノでは3.3ミリしか鍵盤が沈まず、感覚が重かった。新たなグランドタッチ鍵盤では支点の位置を鍵盤から遠くしたため、白鍵の奥の部分をたたいても4.5ミリ沈むようになった。

鍵盤の大改良で直面した2つの課題

だが電子ピアノにおいて鍵盤の支点の位置を奥にするのにあたっては、2つの課題があった。

1つ目は鍵盤の精度が確保できない点。すべての鍵盤は均一な間隔で並び、たたかれたときにまっすぐ下に落ちなければならない。だが従来の機構のまま支点を遠くすると、弾いたときに鍵盤がぐらつきやすくなってしまう。そこで以前は鍵盤のブレをなくすための部品を2つつけていたのを、3つに増やした。

手前が旧来の鍵盤機構、奥にあるのが新しい「グランドタッチ鍵盤」の模型(記者撮影)

もう1つが、物理的に鍵盤を長くすると、ピアノ自体の奥行きが広くなってしまうことだった。これでは電子ピアノの売りである省スペース性が担保できない。

ここで主として工夫したのが、部品の配置だ。かつての機構では、鍵盤の支点の奥にスピーカーなどの部品を組み込んでいたため、部品の分だけ鍵盤機構としての奥行きを伸ばしていた。今回の新機構では、支点部分の下に部品を入れ込んだ。結果、完成品の楽器としての奥行きは従来機構の製品と同じままに保つことができた。


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