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「著作権は作った人に帰属するべきだと思います」(撮影:梅谷秀司)

――これまでは映画、アニメ、ゲームなどの権利は会社や組織に帰属していましたが、この構造は変わっていきますか。

変えないといけないと思います。著作権は作った人に帰属するべきだと思います。ゲームも映画も同じですが、コストを支払った人(組織)、つまりリスクを負った人が著作権を持っている。しかし「クリエイター主義」に変わるべきだと思います。ゼロを1に変える人が潤わなければ、新しいクリエイターは現れません。誰もが得をしやすいほうに流れるし、クリエイティブが投資の対象にだけになるのは健全とはいえないでしょう。

でも、いずれは著作権の考え方が変わるかもしれないと思います。現在すでにネットを介せば、個人が個人に作品を届けることができます。資金の集め方も変わってきています。この時点でコストを負担する著作権者としての会社はいらなくなる。ユーザーとクリエイターの間に会社やサービスが介在する必要はなくなるでしょう。

ゼロを1に変える人が尊重されるべき

ただし、もう少し未来になると、著作権もややこしくなってきます。たとえば、2次創作は現状の著作権法では、著作権者の許可なしに販売は行えませんが、コミケのように現実にはグレーゾーンにあります。一方で、著作者と2次創作者が利益を按分するというスキームも存在します。これからのゲームはユーザーによる改変も普通になると考えられるので、著作権の考えも変わらざるをえないでしょう。

ユーザーやAIが、ゲームを個人に合わせてチューンするのが当たり前になる時代が来るでしょう。あるゲームができたときに、それをみんなで遊ぶのではなく、ローカルルールみたいにユーザーや個別のAIが改造するようになる。最初に投げた丸いボールはオリジナルの作品だとしても、戻ってきたらボールが四角になっているかもしれない。四角いボールを使ったゲームは、まったく別のゲームとして成立しているかもしれない。2次創作とはいえないオリジナリティがあるかもしれない。そのとき、四角いボールを使ったゲームの著作権者は誰になるのか?

やはり、今後、2次創作のクリエイターも含め、クリエイターがさらに才能を発揮できる環境を作るためにも、ゼロを1に変えるクリエイターが尊重される「クリエイター主義」であるべきだと思います。

後編「小島秀夫は世界のエンタメをどう変えるのか

前田 佳子 東洋経済 記者

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まえだ よしこ / Yoshiko Maeda

会社四季報センター記者

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