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しかも、ほとんどの場合、2世タレントは親と付き合いのあるほかのタレントとも古くからの顔見知りだったりする。だからこそ、芸能人を相手に緊張することもない。一方、相手の芸能人の立場から見れば、2世タレントは「○○さんの子ども」ということで、特別に面倒を見たり、かわいがったりする。共演したときにはその関係性が表に出て、和やかな雰囲気になったりもする。

2世タレントを目にする視聴者は、本人を見ていると同時に、その奥にいる親の姿を見ている。親のよい部分を受け継いていればそこを褒めたくなるし、よい部分が見つからなければ「親の七光りだ」とたたきたくなる。どっちに転んだとしても、最低限の興味はある状態からスタートできる。これが2世タレントの強みだ。

2世タレントが目立つのはテレビが守りに入っている?

そんな2世タレントが最近やたらと目立つのは、現在の地上波テレビが守りに入っているからというのもあるだろう。YouTube、Netflix、Amazonプライム、AbemaTVなど、地上波テレビ以外の動画メディアは年々存在感が強まっていて、その視聴者も増えている。面白いものを積極的に求めている人は、ほかのメディアにどんどん流れていく。

そうやってガツガツせずに、なんとなく惰性でテレビを見ている人こそが、現在の地上波テレビの主要な視聴者層だ。だからこそ、今のテレビでは、過去にテレビで流行したものに再びスポットを当てるタイプの番組が目立つ。往年の人気歌手が昔ヒットした曲を歌ったり、かつて有名だったタレントが過去の成功体験やその後の失敗談を赤裸々に語ったりするような番組だ。2世タレントを起用するというのも、すでに人気のある親の立場に乗っかっているという意味では「再利用」型の企画だといえる。

そう、地上波テレビは徐々に「昔からテレビを見ている人」だけを相手にするようになりつつある。なぜなら、そのほうが商売として手堅いからだ。テレビを見る人の絶対数はこれ以上増えそうにないのだから、新規顧客を開拓して視聴率を上げようとするよりも、今ある視聴率を下げないようにしたほうが効率的なのだ。

ただ、これはもちろん「縮小再生産」である。それは、現状における当面の「最適解」ではあるのかもしれないが、局面を打開する「正解」ではない。2世タレントの台頭は、地上波テレビが静かに衰退しつつあることを象徴しているのではないかと思う。

ラリー遠田 作家・ライター、お笑い評論家

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らりーとおだ / Larry Tooda

主にお笑いに関する評論、執筆、インタビュー取材、コメント提供、講演、イベント企画・出演などを手がける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)など著書多数。

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