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それまでの経営会議のスタイルは、1つの議題について責任者がまず25分、ファンシーチャートを使って説明・プレゼンを行う。そしてその後の5分で結論を出すというものでした。「5分間で結論を出せない人は、スマートなマネジャーではない」という、「麗しき誤解」を生み出す会議手法が、さまざまな部門で行われていました。要するに、事前に根回しされた会議という形式で意思決定がなされていたのです。

ガースナーは、一切のファンシーチャートを廃止・根絶し、代わりに、事前に「白書(ホワイトペーパー)」を準備させました。白書には、顧客のニーズ、競争環境分析、長期と短期の主要な課題や、今後どういうことをしていくかを10ページでまとめる。そして遅くとも会議の前日、できれば1週間前に参加者に配布することにしたのです。

参加者は事前に、その白書を読み込んで頭に入れたうえで、会議に参加します。1つの議題にかける時間は、同じく30分ですが、いきなり議論が始まって、30分かけて結論を出すというスタイルに変えたのです。

手間暇をかけた資料はほとんどの場合、会議に必要ないのではないでしょうか。議論の内容と、判断のための資料があればいい。「プレゼン」よりも「議論」に時間をかけるほうが望ましい。会議資料の作成のために優秀なメンバーの大切な時間を奪ってはいけないのです。

会議の出席人数は最小限に絞る

会議の「ムダとり」の2つ目は、「会議の出席者を厳選すること」です。以前のIBMの経営会議には、議論に直接関係があろうとなかろうと、経営会議メンバー全員が集まって意思決定していました。

ガースナーはこの経営会議を廃止し、CEOであるガースナーと、議論の当事者となる事業責任者だけに出席者を絞った会議を行いました。1対1に近い、「意思決定に必要な最小限の人だけが参加して物事を決めていく」というスタイルに変える。そのことによって、従来の形式的な会議から、実質的な会議に大きく変貌したのです。

ファンシーチャートの廃止と白書の導入、そして参加者の厳選によって、会議の質は高まり、時間が短縮され、コストも下がりました。

会社の方針の伝達や進捗報告などの会議は短時間にする。意思決定が必要な会議は参加者を厳選する。決定を当事者が認識し、共有して実行する。マネジャーは、会議の内容・時間・参加メンバー・結果を見直して会議のムダを徹底的に省いていくことが必要です。そして報告・進捗などの定例会議からイノベーションを生む会議に、比重を移していくことが求められています。


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