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温泉をくみ上げるためのポンプ施設(記者撮影)

菱刈鉱山では副産物として銀が採れるほか、温泉も大量に出る。深い部分では、採掘のために、まず温泉を抜く作業から始まる。温泉水は約65度、温泉が出るエリアの坑内はまるでサウナだ。

設置したポンプ設備から排出される温泉は毎分約9000リットル。そのうちの約3分の1は近隣の旅館などへ温泉水として供給される(販売ではない)。残りは35度程度まで冷やし、近くの川内川に放流されている。

菱刈鉱山は「奇跡の金鉱山」だ。開山前の1982年、住友金属鉱山が6本のボーリング調査をした際、なんと6本すべてが鉱脈に当たった。当時は出ないといわれていた地層から発見され、まさに奇跡の宝の山となった。

投資家も潤した金鉱山

その頃、株式市場でも菱刈鉱山は大きな話題になった。「最後の相場師」といわれた是川銀蔵はいちはやくこの金鉱山に注目、住友金属鉱山の株を買い集めた。仕手戦の様相を呈したが、結局、是川銀蔵は大儲け、1983年(1982年分)の所得番付では全国1位(翌年は2位)となった。

もともと、住友金属鉱山は住友財閥の礎となった別子銅山の流れをくむ会社で、株式市場ではいまも「別子」とベテラン証券マンは呼ぶ。当時を知る証券マンは「別子の株で儲けた投資家は多かった」と振り返る。

金の埋蔵量は想定以上だった。開山当初は120トンといわれていたが、すでに現在まで累計230トンを掘り出した。佐渡金山は累計83トンで閉山したが、優にそれを超えている。しかも追加探査のたびに埋蔵量は増える。現在(2016年末時点)の埋蔵量は170トンといわれる。

さらに菱刈鉱山の大きな特徴は、その品位だ。つまり、掘り出した鉱石の中にどれだけの金の量があるか。世界的には1トン掘り出して平均5グラムという。これに対して同鉱山は30グラム(2016年実績)という高品位だ。現在、住友金属鉱山の中期計画では、毎年約21万トンの鉱石を出鉱し、平均品位30グラムとして年間約6トンを生産していく計画だ。鉱山寿命はいまのところ、約30年とされる。


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