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不動産経済研究所によれば、確かに首都圏の新築マンションは2015年後半から契約動向が鈍くなり始め、2016年に入ってから一段と低迷、契約率は市場の好不調を占う分岐点とされる70%を恒常的に割り込んでいる。2012年に5283万円だった都区部マンションの平均価格は、2015年に27%アップの6732万円をピークに低迷。2016年の発売戸数は3万5772戸と、リーマンショック後の2009年以来の低水準にとどまった。

不振の理由は明白で、価格が高くなりすぎたからだ。アベノミクス効果による地価上昇に加え、人件費や資材価格高騰による建設コストの上昇、また低金利が住宅ローン利用者の購買力を上げ、借り入れを通じて事業を行うデベロッパーにも恩恵をもたらしたといった側面もある。東京カンテイによれば、首都圏の新築マンション価格(70m2換算)を平均年収で除した年収倍率は、2012年の8.7倍から10.68倍へとハネ上がった。

しかし、それ以降の動向を冷静に眺めるとどうだろう。首都圏新築マンションは2017年に入ると5000万円台後半へと、一段と上昇し、契約率も70%前後へと回復している。都区部に至っては7159万円と、36%(2012年比)もの上昇と、すっかり回復しているではないか。数字を追いかけてみれば、バブルが存在し、それが崩壊するといった論拠はすでに崩れている。

発売戸数が少なくなっている本当の理由

では、いったい何が起きているのか。昨今の新築マンション市場の特徴は「弾力性」があることだ。とりわけ、首都圏新築マンション市場は大手の寡占が進んでいる。リーマンショック前の大手寡占率は20%程度だったが、現在では40%以上が大手による供給になっている。マンションの立地について都心・駅近などを中心に厳選する傾向が強まっていること、建物のタワー化や大型化が進んだことで事業総額が膨らむことから、中小規模のデベロッパーには手を出せなくなっていることが理由の1つだ。

このところ、発売戸数が少ないことには明確な理由がある。体力のある大手にとっては、新築マンションはしょせん事業ポートフォリオの一部にすぎない。在庫や売れ行きなどの市場動向をうかがいつつ、供給調整を行っているのが実態だ。もちろん完成在庫もあり、現場では値引き販売も行われているが、すぐに売れないと破綻するという状況でもないため、焦りはない。こうした弾力性のある市場では、世界的な大規模経済・金融危機や、大規模な震災、または極端な金利上昇でも起きないかぎり、大きく崩れる要素はないのだ。


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