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このことを心配する日本人の政策立案担当者もいる。「日本は自国の責任において、何らかの行動を起こさなければいけない」と、ある元外務政務次官は言う。「もっと自らで行動し、トランプ大統領の政策で日本を破壊させることは許されないと、彼に理解させるべきだ」。

日米安全保障条約の範囲内では、より強力な日本の自主性を模索する動きが出てきている。日本はTPP11と呼ばれる「環太平洋パートナーシップ協定」に署名した国々が集まる話し合いで、リーダーシップを発揮した。

スパイダーマンは言っている

日本からのネゴシエーターはTPP11で合意に至ることを願っており、それができれば、来月のアジア・パシフィック・サミットで、合意内容を発表できる。日本は米国がTPPのテーブルに復帰することを願っているが、その一方で、話し合いを引っ張る現在の立場にますます満足している。

安倍首相はまた、長らく延期になっている、日中韓の首脳会談を12月に招集したい意向だ。これに加え、長期にわたって模索しているロシアとの平和条約を締結し、千島列島の領土問題を解決する道をいまだに探っている。しかし、条約締結には安倍首相が譲歩して、1956年の「日ソ共同宣言」の内容を受け入れる必要がある。

しかし、安倍首相が憲法改正に力を注ぐときが来れば、日本のリーダーシップ確立に向けた試験的な歩みがすべて無駄になりかねない。そのときとはつまり、祖父の岸信介に倣って、米国に強要された憲法とその中にある平和条文には、本質的に日本の自治権が欠如しているという議論を、憲法改正によって、少なくとも象徴的に、解決する目的で権力を行使するときである。

自身が望む第9条の内容よりも、はるかに骨抜きの書き換えを提示することを余儀なくされてきた安倍首相だが、この状況にあって、自民党がもともと画策していた全文差し替えという野望に立ち返ることを選ぶかもしれない。

しかし、強硬に憲法改正を推し進めることは、北朝鮮問題の当事国である中国と韓国との間に、新たな緊張を引き起こすことは明らかだ。また、政治体制は言うまでもなく、日本国民が、長い間手を触れていない、そして、国際秩序における戦後の日本の役割について大きく意見が分かれる可能性がある、この議論を始める心の準備ができているのかどうかは、はなはだ怪しい。

今回の選挙で安倍首相は再び、揺るぎない権力を手に入れた、少なくともこの瞬間は。しかし、スパイダーマンがこう言っている、「大いなる力には、大いなる責任が伴う」。

ダニエル・スナイダー スタンフォード大学講師

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Daniel Sneider

スタンフォード大学ショレンスタインアジア太平洋研究センター(APARC)研究副主幹を務めている。クリスチャン・サイエンス・ モニター紙の東京支局長・モスクワ支局長、サンノゼ・マーキュリー・ニュース紙の編集者・コラムニストなど、ジャーナリストとして長年の経験を積み、現職に至る。

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