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中学3年のとき、「全日本学生音楽コンクール」のバイオリン部門で優勝したことがある音楽少年はなぜデリヘルで働くようになったのか(写真:駒草出版)

デリヘルドライバーという職業があるのをご存じだろうか。

デリバリー型ファッションヘルス、通称・デリヘルという性風俗の一形態がある。その名の通り、女性を客の元へと派遣(デリバリー)するものだ。もともと日本のセックス産業は、東京であれば歌舞伎町のような繁華街か、あるいは吉原(台東区千束)などの風俗街に店舗を構えて営業していたものだった。

ところが2000年代に入り条例が幾つか改正され、「店舗型風俗店」の新規開店が禁止となり、結果デリバリー型(デリヘル)の風俗店が爆発的に増加した。つまりかつて風俗とは客が店に足を運ぶものだったのが、逆の構図となった。デリヘル嬢たちは店が所有するマンションの一室などで待機している。したがってそこから客のもとに女性を送り届ける、「デリヘルドライバー」という新しい職業が生まれたのだ。

個性的な前歴を持つ男たちのなかでも

それでは、どういう人たちがデリヘルドライバーになるのだろう??東スポこと『東京スポーツ』に代表されるスポーツ紙の求人欄を広げてみれば、そこには「デリヘルドライバー急募」という文字がズラリと並んでいる。「即採用」「ガス代支給」「日給一万円以上」など、特に「日払」と大きく打つところが多く、「年齢不問」とされるところも少なくない。

これはどういうことか。職とカネのすべてをなくし、今日の食事すらままならない状態の者でも、運転免許証を所有し車の運転さえできれば、明日からは何とか生きていける職業だということもできるだろう。 ?

今回、『デリヘルドライバー』(駒草出版)という本を書くにあたり、9人の人物に取材した。元闇金業者、元ホスト、渋谷のギャル男でプッシャー(違法ドラッグの売人)だった若者、組から逃亡した元ヤクザ、性転換した元女性などなど、実に個性的な前歴を持つ男たちに会った。

しかし誰よりもドラマティックだったのが、ここで紹介する風見隼人(50歳・仮名)だろう。彼は、かつてクラシックのバイオリン・学生コンクールで日本一になったこともある天才音楽少年であった。


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