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:そうですね。それから「自然だから完璧に保護しないと」という発想はないんです。サステイナブル(持続可能)ならいいんです。

フィンランドには国立公園が40カ所あるんですけど、昨年から、520の事業主体と協定を結んで「ルールを守りながら、サステイナブルな観光事業をしよう」という方針を打ち出したんですね。そうしたら昨年1年間だけで約180億円の経済効果と1200人の雇用を生み出すことに成功したんです。

「自然を減らさず活用し続けること」が前提

林 千晶(はやし ちあき)/ロフトワーク共同創業者、代表取締役。1971年生まれ、アラブ首長国連邦育ち。早稲田大学商学部、米ボストン大学大学院ジャーナリズム学科卒業。花王を経て2000年ロフトワークを起業。Webデザインやビジネスデザインなど手掛けるプロジェクトは年間200件超。2015年より株式会社飛騨の森でクマは踊る代表取締役社長。
その他、MITメディアラボ所長補佐など多数の役職も務める。『日経WOMAN』の「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2017」を受賞(写真:パブリックアライアンス事務局提供)

木下斉(以下、木下):「保護すること=使わせないこと」と思いがちだけど、実はそうじゃない。大切なのはサステイナビリティなんですよね。サステイナビリティをいち早く政策に取り込んだドイツの考え方は、「使ってもゼロにならないよう活用し続ける」というもので、活用することを中心に置いている。

だけど日本では、「保護」と言われると、そのまま隔絶して誰も入れないようにしようとしてしまう。

:本当にそう。誰も入れなかったら、何もできないのに。実は世界第3位の森林率を誇る森林大国なのに、その森林を利用していないどころか、負債だと思っているみたいですよね。

野尻佳孝(以下、野尻):実は僕も2017年の6月にフィンランドに行ってきました。現地で利益を出しているツーリズム企業も訪問しました。で、そこの人たちとサウナに行ったんですね。フィンランド流の湖畔にあるサウナです。

サウナでたっぷり汗をかいたら、そのあと日本なら水風呂だけど、フィンランドでは違った。いきなり「湖に飛び込め!」だって。

:私、冬に行ったんですけど、サウナの前の湖には厚い氷が張っている。それでも「チアキ、飛び込め!」って言われた(笑)。

野尻:そういうツーリズム系の企画・コンテンツを楽しみながら作っているんだよね。

それからずいぶん僻地のほうにも連れて行ってもらったんだけど、そこでは野生のトナカイがいっぱい出てくるんですよ。ものすごく間近で見られるので興奮しました。また現地の普通の住民の人が、トナカイの説明がとてもうまい。みんなが旅行者のお世話をするプロのツアーアテンダーみたいなんですよ。

木下:他人の森じゃないですものね。「自分たちが使っていい場所だから」なんでしょうね。


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