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しかし、そんな折、ビートたけしさんの看板番組「OH!たけし」から出演依頼がきた。ビートたけしさんの番組を任されたディレクターが、たまたまロサンゼルスで越前屋さんのテレビ番組を見て「なんだこいつは??使ってみたい」と思い、自身の権力を使って新番組にねじ込んだのだ。

ビートたけしさんの番組の出演者は、ビートたけしさん自身が出演者をピックアップしていた。たとえば石倉三郎さん、小林聡美さん、もたいまさこさん……などすでにたけしファミリーが形成されていた。そこに何の縁もない越前屋さんをねじ込まれるというのは、異例中の異例で、戸惑っているスタッフもいた。

「テレビに出たい」と思っている人から見たら、信じられないくらいトントン拍子だ。だが越前屋さん自身は特にそう感じてはいなかった。

「トントン拍子だとはまるで思ってなかったですね。そもそもテレビタレントも芸人も目指してなかったので。『今いちばんおもろいことはなんだろう?』とだけ真剣に悩んでました。本に書いた時に客観的に自分の半生を見て、ああトントン拍子だったんだなって初めて気がつきました(笑)」

小ざかしいヤラセなら、やりたくない!

そして1988年、現在も人気が高い「探偵ナイトスクープ」が始まる。

現在は小説家として活躍する百田尚樹さんが、放送作家として越前屋さんに会いに来た。

企画書には「視聴者から送られてきた依頼を、探偵が解決する番組」とだけ書かれていた。越前屋さんはひと目で、これは難しい企画だな、どこかウソをつかないと成立しない番組だなと見抜いた。

百田さんはいぶかしむ越前屋さんに、

「僕もウソは嫌です。たとえば『何かを見つけてほしい』という依頼があったとき、結果的に物が見つかる見つからないは問題ではなくて、探偵がどうやって見つけていくか、そのプロセスを楽しむ番組にしたいんです」

と説明した。理屈としてはわかる。だが、それはあくまで放送作家としての理屈だと思った。実際にロケをする側になって考えたらできっこない。たとえできたとしても時間がかかる。

「『どうせ小ざかしいヤラセをするんでしょ?』とケンカを売りました。僕はガチでしか番組を作りたくないので、正直やる気なかったんです」

百田さんは、

「わかってます。僕もそういうヤラセはしたくない。したくないから、ほかでもない俵太さんに頼んでるんです」

と言った。

「そう言われちゃって、ちょっとうれしくなってしまったんだよね。うまく乗せられてしまいました(笑)」

越前屋さんは「探偵ナイトスクープ」に参加するのに2つの条件を出した。1つは「ヤラセをしない」ということ。そしてもう1つは「吉本興業の芸人さんを使わない」ということだった。

「吉本興業の芸人さんは、その人がとてもおもしろいです。それはすばらしいことだけど、なんでも自分の面白さに引きずり込んじゃうところがあるんです。街ロケでもいつの間にか、芸人さん自身を主役にしてしまう。そうじゃなくて『やっていることの純粋なおもろさ』を見せないといけない。その純粋なおもろさに人は引き付けられるんです」


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