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かつて「シビックタイプR」といえば、ごく一般的な量産型ハッチバック車のエンジンをカリカリにチューンするとともに車両重量を軽量化。締め上げたサスペンションと固めのデフを与えて元気に走るモデルだった。エアロパーツやレカロ製バケットシート、チタン製シフトノブ、モモ製ステアリングなども装備しながらも、車両価格も初代は税抜きで199.8万円(東京地区)とお手頃であった。

チューニング好きの走り屋が後から組むようなパーツの一群が、ほとんどあらかじめ組み込まれていたから、走り屋連中はこぞって入手してサーキットに持ち込んだものだ。ホンダの赤いエンブレムも象徴的だった。

性格が大幅に変わったのは…

このシビックタイプRの性格が大幅に変わったのは2007年登場の3代目・4ドアセダンモデルだった。たしかにエンジンのタッチはあいかわらず独特の先鋭的な高回転型だったものの、ボディサイズが大幅に拡大されており、従来型のファンの心に届く仕上がりではなかったように思われる。

しかも車両本体価格は300万円前後へと大幅に上昇した。熱烈なファンたちの声を受けて、2009年には限定販売ながら本来日本市場には導入されていないハッチバックボディを持つモデルが「タイプRユーロ」として導入された。

さらに性格をがらりと変えたのが4代目シビックタイプRである。およそ5年ぶりに限定販売として復活したこの世代からは脈々と受け継がれてきた自然吸気超高回転型エンジンを捨て(排ガス性能の観点から諦めざるをえなかった)、ターボチャージャーの装着により320馬力ものパワーを得ることを選んだ。

足回りにも電子制御のアダプティブ・ダンパー・システムやデュアルアクシス・ストラット、19インチ・タイヤなど、サーキットでの速さに貢献するものはすべて織り込んだ仕様として、ニュルブルクリンク北コースにおいてFF車世界最速ラップタイムを刻むことが使命とされ、それを成就した(7分50秒63)のだ。その過程で上昇せざるをえなかったのが価格で、先代シビックタイプRのそれは消費税込みで車両本体428万円にまで高まったのである。

先代モデルの絶対的な速さを追求する路線を踏襲し、さらに進化させた(撮影:梅谷秀司)

5代目シビックタイプRは、先代モデルの絶対的な速さを追求する路線を踏襲し、さらに進化させたモデルだ。前述したエンジンの高出力化に加え、ベースモデルであるシビックセダン/ハッチバックと同様のリアマルチリンクサスペンションの採用、ボディの高剛性化を施した成果が、ニュルブルクリンクにおけるラップタイムを7秒近くも更新することにつながったのだ。

それにしても「450万円は高い」との声には筆者も同情する。初代から比べると2倍以上にハネ上がっている。2016年9月に国税庁が発表した「民間給与実態統計調査」によれば給与所得者の平均年収は420万円。男性に限っても同521万円だ。


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