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まちに与える変化の期待も大きい一方で不安材料も多い。ベルモールにあるライトレールオープンハウスの職員に話を聞いたところ、「懸念の声としては、ライトレールの開業・工事による渋滞の悪化が最も多い」という。ライトレール計画と大きくかかわる鬼怒通りは栃木県内でも有数の交通量で、多いところでは約3万2000台(昼間12時間交通量)ものクルマが走る。混雑時の平均速度は時速15?20km程度だ。

しかし、清原工業団地や芳賀工業団地へクルマで通勤する人は必ずしも宇都宮市の中心部に住んでいるわけではなく、市内南部の雀宮方面から来る人も多い。すると、ライトレールが開業したとしても、クルマの交通量が劇的に減るほどの効果は期待しづらい。

「乗り継ぎ」はうまくいかない?

また、現在運行しているバスからライトレールへの転換も課題だ。現在のライトレール計画ではいくつかの駅にトランジットセンターを設けることになっている。現在宇都宮市中心部まで乗り入れているバスをライトレールの停留所から出る支線バスに転換することで、より密な交通ネットワークを作ろうとしているわけだ。しかし、この乗り継ぎシステムがうまく機能するかどうかはかなり難しいといわざるをえない。

JR宇都宮駅と東武宇都宮駅の間の「大通り」ではひっきりなしにバスが通る(筆者撮影)

たとえば仙台市では地下鉄東西線開業時に市中心部へのバス乗り入れを減らそうとしたところ、沿線住民の反対により減便本数は当初計画の半分にとどまった。盛岡市では市中心部と郊外のトランジットセンターをピストン輸送する基幹バスと、トランジットセンターと郊外各所を結ぶ支線バスの2つに分け効率化を図ってきたが、ターミナルでの乗り継ぎを嫌う声を受け、支線バスが幹線バスと同じように市中心部まで直通するようになっている。

今回の宇都宮ライトレール計画では、宇都宮市の中心部となる駅西側まで路線が敷設されないことも気にかかる。実際に筆者は夕刻に東武宇都宮駅前からゆいの杜までJRバス関東の路線に乗車したが、ほとんどが宇都宮駅より西側からの乗車だった。宇都宮では具体的な幹線・支線の設定はこれからだが、かなり慎重に使いやすい交通体系を作る必要がある。失敗すればバスもライトレールも赤字で共倒れとなり、公的補助ばかりが大きくなる結果になりかねない。


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