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FOMC(米連邦公開市場委員会)メンバーによるインフレに対する見解にもここのところ若干変化がみられている。FRB(米連邦準備理事会)のイエレン議長は11月21日の講演で、「拙速な利上げはインフレ率を2%の目標未満にとどめてしまうリスクがある」と発言した。同議長が「インフレ率が目標の2%に戻るまで金融政策を据え置くのは賢明ではない」などと発言していた9月頃とは異なる見解だ。また、翌22日に公表されたFOMC議事要旨(10月31日?11月1日開催分)では、メンバーの多くが近い将来に金利を引き上げる必要があると述べていた一方で、何人かは、物価の弱含みが長引いていることを不安視していたことも示された。

筆者は米国で潜在成長率を上回る経済成長が続くなか、GDPギャップの縮小とともに2018年は米国のインフレ率が遅まきながら緩やかに上昇するとみており、コアPCEデフレーター(個人消費支出に関わるインフレ率)は直近の前年比1.4%から、2018年末には2.0%まで伸び率が高まると予想している。これとともにドルも、高金利通貨に対しては弱いながらも、対円、対ユーロではじわりと上昇し、ドル円は2018年末で120円付近になると予想している。

FRBの利上げも、2018年は3回程度と緩やかなペースは変わらないとみており、リスクオンの地合いは来年いっぱい継続すると予想している。したがって、ドル円のレンジの下限は110円ちょうどを大幅に割り込む可能性も低いとみており、この見通しが正しければ、来年を通じてドル円のボラティリティは低水準にとどまりそうだ。

円売りのポジションが溜まりやすい点には注意

ただ、前述したパネルディスカッションでは、「円安シナリオは3人の見通しがそろったから、かえって要注意だ」という点でも意見が一致した。3人とも円が最弱通貨となるという点で一致したということは、それだけ円安になる条件がそろっているということだが、こうしたケースでは得てして相場が大きく反対に向かうリスクも伴う。

理由は、条件が揃っているだけに、同じ方向の持ち高が市場に溜まりやすいということである。このケースでいえば、円売りポジションは市場に蓄積しやすく、実際、すでにシカゴ通貨先物市場IMMの投機筋によるポジションをみれば11万4000枚と、大きく円売りに傾いている。これが何らかのショックで巻き戻された場合、円高は大きなマグニチュードを伴う。今年みられた大幅なユーロ高が好事例だ。


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