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ベンチャー立ち上げ期や勢いがあったころの仕事のやり方や求められることと、その後では、求められるスキルも経験も異なってきますから、実際はその両方のステージで活躍しようとなると、かなりの努力を強いられます。

同時に、ベンチャー立ち上げ期に入社したメンバーとそれなりに会社が成長したステージで入社した社員では、仕事に対するスタンスや考えが異なるのもごく自然なことです。

営業に対する上司のやり方や考え方に馬場さんが賛同できないということですが、まさにそのような状況は往々にして起こりうることなのです。

転職せずが前提でもありますから、そのような中で馬場さんにできることは、変えようとしても変えられないことに注力するのではなく、自分で変えられる部分を変えて会社の内部で変化を起こしていくことです。

上司の考え方は、彼らがベンチャー成長期を通じて学んできた彼らなりの常識ですから、簡単に変わるものではありません。

「自己否定」を自ら課して成長につなげられる人もいますが、多くの人はそうではありません。それだけ「成功体験」というのは個々人の中で強烈な歴史となっているのです。であるからこそ、そう簡単には変えられない可能性が高い。

会社にとっての新しい常識を創り上げる

反対に、馬場さんにとって自分自身を変えることは容易なはずです。上司の営業方法や部署運営方法が間違っていると考えているのであれば、論より証拠です。

馬場さん自身が、現状の会社にとってふさわしい営業スタイルを立案し、自ら営業成績を上げることによって、会社にとっての新しい常識を創り上げるべきなのです。

そうすることによって初めて周りも過去の成功体験をベースとする常識を否定でき、それをもって会社が変わるきっかけにもなりうるでしょう。

現状の不満に目をつぶるべきか、と書かれていますが、本来仕事は苦行ではありませんし、せっかく馬場さんは会社と製品を好きなわけですから、それではもったいない。

ご自身が変わることによって周りを変えるリーダーシップを取り、自分自身のストレスの解消にもつながればそれが理想です。

上司を含めベンチャー立ち上げ期にいたメンバーは、誰からも教わることなく、試行錯誤しながら営業手法なりを編み出していったはずです。現在の会社はそういった努力の軌跡の基に成り立っているのです。

であれば、後発メンバーである馬場さんは新たなやり方による、既存メンバーにはない新たな付加価値を会社に提供することが、できうる最大限の貢献です。

上司や会社が変わらないからとあきらめ、自分自身が変わることを忘れてしまっては、どんな会社においても通用しません。営業目標を達成できないのはなぜか、既存のユーザーはなぜ自社の製品を選び使っているのか、当時と環境はどう変わっているのか、考えるべきことはたくさんあるはずです。

現時点であるべき営業手法を編み出すにあたって、ぜひ上司の話も聞きながら馬場さんなりのシナリオを組み立てていくとよいでしょう。

参考にならない成功体験はありません。どんな話も否定するのではなく、学ぶ姿勢でいないと、馬場さんも将来同じように周りから思われてしまう可能性がありますよ。

馬場さんが自らの努力によって会社に新たな付加価値を提供し、会社がよりよい場所になるための変革の要となることを応援しております。

安井 元康 『非学歴エリート』著者

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やすい もとやす / Motoyasu Yasui

MCJ社長兼最高執行責任者(COO)。アニメーションの企画・制作を手掛けるベンチャー企業を経て、MCJにて東証への上場を経験。その後、経営共創基盤にて戦略コンサルタントして9年間活躍し、2016年3月にMCJに復帰。著書に学歴コンプレックスに悩みながらも独自の方法でキャリアを切り開いてきた様子を描いた『非学歴エリート』(飛鳥新社)や、自分ならではの人生を生きる術を描いた『極端のすすめ』(草思社)等がある。

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