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では、阿波おどりのもう一方の主催者である、徳島新聞社はどうでしょうか。同新聞社は、こうした市と協会の関係を知りながら、市と協会に「雨天時のチケット払い戻し」などの事業リスクを負わせつつ、一方ではイベントの主催者として、有利なチケット販売や宣伝広告事業などを自社のビジネスにしていた構図があった、などと報道されています。

このような「歪んだ状態」が長年放置されていたものの、赤字問題などが深刻化するなか、市、観光協会、徳島新聞という、地域内での「三つ巴の覇権争い」が、不透明な運営を白日の下にさらすことになったようです。

イベントが慢性赤字化する「3つのヤバイ過程」とは?

一見すると恐ろしい話ではありますが、実はこの種の話は、観光事業、再開発事業、道の駅開発など「地域をあげた一大事業」では、結構よくある話でもあります。そして以下の3つの過程を経て、負の連鎖は止まらなくなることが多いのです。3つの過程を一つひとつ見ていきましょう。

(1) 客数増のために「無料」でなんでもやってしまう

一大事業は観光客数、動員数といった「人数」を追い求めるようになります。そのため、集客数をあげるためにはなんでも無料サービスを展開してしまいがちになります。ただし、人が来れば来るほど、当然ながら対応する人員、施設の維持などに多額の予算が必要となり、運営赤字が拡大。「経済効果があるから地域にとっては大きなプラス」などといいながら、肝心の「経済効果から稼ぐ仕組み」を作らず、あろうことか、補助金を入れてもなお赤字の事業構造も放置されてしまうのです。

(2) 事務局は大赤字、受益者は「ただ乗り」で儲ける

運営側が、ひとたび赤字補填のために補助金や委託事業をもらってしまうと、それが当たり前のようになり「補助金や委託事業ありきの運営体制」になってしまいます。さらに何をやるのにも補助金をあてにして運営する人々ばかりとなり、「稼ぐプログラム」を考えられる人材が運営組織内からいなくなります。結局、集客の核となるイベントや集客施設を支える事務局は、補助金漬けでも大赤字に。その一方で集客した人たち相手の宿泊業や飲食店、メディア事業などを営む事業者は儲かるという「フリーライド(ただ乗り)構造」が成立。政治的にも「行政が赤字を支えるのは仕方がない。民間が儲かるのだから」と支持してしまう。

(3) 「闇」が継続、「常識」になり誰も手を出せなくなる

どこの地域の祭りやイベントにも、常識に照らせば「おや、これはおかしいのでは?」と疑問がわくような「闇」があります。しかし、昔から続くものであればあるほど、その闇は地域の「常識」となり、誰かがそれを変えようと手を出せば、利害関係者から批判されます。結局は「おかしい」と思っていても誰も手を出せず、運営赤字は放置され、行政の負担は拡大し、儲かるところが潤うだけの不均衡な構造がそのまま継続され、負のスパライラル(連鎖)は拡大していきます。


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