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現役時代は忙しすぎて、「一人」の時間がぜいたくだったりもする。だから、退職後、たっぷりと「自分だけの時間」を持つことを楽しみにしている、という人もいるだろう。しかし、現実は、有り余る時間を持て余し、常態化する「孤独感」にフタをして我慢している人も少なくない。人間は本来、人とのつながりを欲し、その中で生きていく「社会的動物」である。だからこそ、ソーシャルメディアやペットがこれだけの人気を集めている。人とのかかわりの中で、「必要とされている」「役に立っている」「承認されている」という感覚が生きがいにつながる。だからこそ、人との結びつきの断絶である「孤独」は、人間としての根源的な幸福感や健康を大きく蝕むもの(参考記事)であるとして、海外では「現代の伝染病」として大きな社会問題になっている。日本では、孤独が極端に美化され、その「礼賛本」があふれかえっているが、 「孤独」と「ひとり」は全くの別物である。「ひとり」の時間を楽しみながらも、社会と繋がり続け、「孤独にならない生き方」を探る姿勢も大切だろう。

とはいえ、「ムリに人と群れるのは苦痛である」というオジサン、そしてオジサン予備軍の方々も多いことは重々承知だ。しかし、身の回りの男性たちを見ると、「ほんの一押し」や「ささいなきっかけ」で、最初の一歩を踏めば、あっという間に人生が変わるケースも山とある。そんなわけで、ゆるくつながりを作り、人生100年時代をたくましく生き抜くための方策をいくつかご紹介したい。

老後のサバイバルに欠かせないのは?

<1>「カネ」「コネ」「ネタ」

独身者がすなわち孤独ということではまったくない。結婚していても孤独だという人もいるだろうし、Alone(一人)とlonely(寂しい)はまったく異なる次元のものだ。一人暮らしでも、いざというとき、頼れる、安心できる、そんなつながりがあればいい。

しかし、コミュニケーションが苦手、知らない人と話すのは疲れる、と言う方も多い。筆者は、老後のサバイバルに欠かせないのは「カネ」と「コネ」(つながり)と「ネタ」(自分のやりたいもの)の3つである、と拙著で紹介しているが、この本の書評を経済アナリストの森永卓郎さんに書いていただいた。「私はコミュニケーションが得意でなく、芸能界には友達がいない」という森永さん曰く、いちばん重要なのはネタ、だという。森永さんはトミカの収集という趣味を追求することで、仲間にも巡り合えた。それが社会から評価されたり、商売のタネになることだってあるというわけだ。

つまり、「オタク上等」なのである。ただ、この「夢中になれるもの」も、なかなか簡単に見つかるものでもない。早い内から、「ネタ」探しを始めておくことに越したことはないのである。

<2>「会社」から「社会」へ

男性の場合、日本の「会社村」の中で、40年近くを過ごすと、上意下達の序列コミュニケーション、「自分の話を聞け」的なオレ様トークがデフォルトになってしまいがちだ。滅私奉公、会社と一蓮托生という関係を続けると、社外の人と、「仕事言語」以外でコミュニケーションをとることが難しくなってくる。退職してから、「俺は〇〇社の部長だった」とついついマウンティングをしてしまうことにもなりかねない。

早い内から、肩書や社名に頼らずに、社外のネットワークや仲間と接点を広げる機会を模索してみる。パパ友、ご近所、地域コミュニティなどとの付き合いは、最初は恐る恐るでも、始めてみたら楽しかった、という声をよく聞く。会社という「ムラ」から時には離れ、もっと大きな「社会」という視座に立てば、見えなかった多様な景色が見えてくるだろう。「社会」復帰は早ければ早いほうがいい。


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