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何も引き出せていない、という点は自民党も変わらない。もっとも自民党の目的は野党と異なり、佐川宣寿前国税庁長官で責任を止めることに尽きている。質問に立った青山繁晴参議院議員は、国会議員の質問内容や陳情の予算措置を“人質”にする財務省の「おごり高ぶり」を批判した。

3月19日、参議院予算委員会で答弁する安倍首相(写真:REUTERS/Issei Kato)

和田政宗参議院議員は太田充理財局長に「まさかとは思うが、民主党政権の野田総理の秘書官も務め、増税派だからアベノミクスを潰すために、安倍政権を潰すために意図的な答弁をしているのではないか」と述べ、太田氏から「いくらなんでも」と全力で反論されている。

この和田氏の発言については、党内外から多くの異論が出た。財務省出身の片山さつき参議院議員は同日夜の報道番組で、和田氏の質問は「あれは和田さんの個人の思想信条でなさったこと」として自民党とは関係ないとばっさり斬り捨てた。経済産業省出身で、鳩山内閣で内閣官房副長官を務めた松井孝治慶應義塾大学教授も、SNSで遺憾の意を示している。

青山氏も和田氏も安倍晋三首相に近い。自民党内では森友学園問題についてあえて質問を希望する議員がいなかったので、人選は官邸が行ったのだろう。その前日に公表された共同通信など各社の世論調査によれば、内閣支持率は大きく低下。毎日新聞や朝日新聞、日本テレビの調査に至っては、10ポイント以上も下落している。そのような状態で、安倍首相に近い人物をあえて質問者に出すことは、果たして得策といえるだろうか。

「安定感」を示したのは共産党

その一方で、「安定感」を示したのは共産党だろう。小池晃書記長は、なぜ決裁書に昭恵夫人の名前が記載されているのかについて太田局長に尋ね、以下の答弁を引き出した。

「それは基本的に総理夫人だということだと思います」

その後、太田局長が「籠池氏が盛んに昭恵夫人の名前を出したから」と述べたが、これはかえって「総理夫人」を強調することになる。そもそも昭恵夫人が総理夫人でなければ籠池氏が何度もその名前を出すはずがないし、昭恵夫人の名前を決裁書に記載した近畿財務局の職員は籠池氏がその“威光”を利用しようとしていたのを知らないわけがない。


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