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今年8?9月ごろにIPO(株式新規公開)を計画するCATLは、約2000億円を調達する予定だ。資金の大半は、年間24GWhの生産能力を持つ車載用リチウムイオン電池工場の新設に充てる。現在の生産能力は17GWhであるため、新工場が稼働すれば米テスラがパナソニックと共同運営する世界最大の車載電池工場、ギガファクトリー(同35GWh)を超える。2020年までには全世界で50GWhの生産能力を保持する計画も公表。その生産計画分の大半が受注済みだという。

パナソニックの中国電池工場に暗雲

CATLの快進撃に心穏やかでいられないのは、車載電池の世界大手、パナソニックだ。中国深?の調査会社GGIIによると、2016年はパナソニックが世界シェア首位を死守したが、2017年にはCATLが猛追し、パナソニックを抜いている。

利益率でも大差をつけられている。CATLは純利益率20%超と高い収益性を維持する(政府からの補助金も含む)。対するパナソニックの2017年度の二次電池事業は、54億円の営業赤字に沈む見込みだ。生産設備の大型投資がかさんだことに加え、最大顧客である米テスラの生産遅延が大きく響いた。

パナソニックの角形電池。日系自動車メーカーの採用拡大を目指している(写真:パナソニック)

パナソニックにとって頭が痛いのは、今年3月13日に量産出荷が始まったばかりの中国・大連工場の先行きだ。ここでは、ホンダやフォード、トヨタ向けの角型リチウムイオン電池を生産するとみられる。前出のホワイトリスト入りを目指してか、「津賀一宏社長は何度も中国詣でをしたと聞く」(自動車業界関係者)。だが、依然としてパナソニックの名前はそこにはなく、日系メーカーはCATL製電池の調達を検討している。

パナソニックとしては「大連工場で作った電池は北米市場への輸出をメインに、中国市場にも出す。今後どこまでラインを拡大できるかはお客さん次第」(会社側)という姿勢。爆発の危険性があり、重量もある電池は地産地消するのが効率的だといわれているが、苦渋の決断を迫られた形だ。

CATLも決して安泰ではない。外資系自動車メーカーがCATLの電池を搭載するのは、まだ中国国内で販売する電動車が大半だ。中国のEV市場の拡大が遅れる可能性もあるほか、中国政府からの補助金廃止のあおりも受ける。今後も高い成長を続けるには、欧米や日本国内を走る車への採用を実現させるしかない。

宮本 夏実 東洋経済 記者

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みやもと なつみ / Natsumi Miyamoto

自動車メーカー、部品会社を担当

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印南 志帆 東洋経済 記者

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いんなみ しほ / Shiho Innami

早稲田大学大学院卒業後、東洋経済新報社に入社。流通・小売業界の担当記者、東洋経済オンライン編集部、電機、ゲーム業界担当記者などを経て、現在は『週刊東洋経済』や東洋経済オンラインの編集を担当。過去に手がけた特集に「会社とジェンダー」「ソニー 掛け算の経営」「EV産業革命」などがある。保育・介護業界の担当記者。大学時代に日本古代史を研究していたことから歴史は大好物。1児の親。

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