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軽油引取税にはこうしたことが起きないのは、軽油を給油するディーゼル車の多くが産業用であり、消費者には容赦なく課税し、産業・業界に配慮した税制という批判も出てこよう。さらに免税軽油という制度もある。軽油引取税には消費税が加算されないばかりか、軽油引取税自体を特定の産業の用途(運送業、農業など)には免税する制度だ。

これは期限を設けて免税をする時限法制だが、期限が来るたびに延長を繰り返している(免税対象用途には多少の廃止がある)。課税政策は声の大きい者の理屈が通る世界のように筆者は感じる。

いくらでも新たな税が作られる可能性も

たとえば、熱海市は住民登録をしていない別荘所有者には固定資産税に加え、別荘等所有税を全国で唯一課している。税率は延べ床面積1平方メートルにつき年額650円だ。これは納税義務者が同じであり、不当な二重課税ではないのか?熱海市の見解はこうだ(熱海市HPの別荘等所有Q&A質問6より)。

固定資産税は家屋の価格(評価額)、別荘等所有税は述べ床面積をそれぞれ課税標準として課税されており、課税標準が異なっていますので二重課税とはなりません。

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この理屈が通るのなら、さらに建物の高さで税金を取ることも可能なのだろうか??余談だが、英国では昔、建物における窓の数に応じて課税される「Window Tax(窓税)」税金まであった。納税義務者に加え対象が同じでも、課税標準が異なるから問題ないといわれてしまえば、いかようにも新しい税ができるだろう。

そもそも自動車は自動車取得税、自動車税、自動車重量税を取られ、さらに消費税、ガソリンを入れればガソリン税が取られる。これらには自動車による交通問題の解消、環境対策などの政策目的もあるが、消費者の税負担はかなり大きい。

いつの間にか産業界に甘く、一般の消費者に厳しい税制が作られる可能性がある。消費者がしっかり声を上げる必要性を感じる。

細川 幸一 日本女子大学教授

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ほそかわ こういち / Koichi Hosokawa

専門は消費者政策、企業の社会的責任(CSR)。一橋大学博士(法学)。内閣府消費者委員会委員、埼玉県消費生活審議会会長代行、東京都消費生活対策審議会委員等を歴任。著書に『新版 大学生が知っておきたい 消費生活と法律』、『第2版 大学生が知っておきたい生活のなかの法律』(いずれも慶應義塾大学出版会)等がある。2021年に消費者保護活動の功績により内閣総理大臣表彰。歌舞伎を中心に観劇歴40年。自ら長唄三味線、沖縄三線をたしなむ。

 

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