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■大手私鉄

目立つのは京浜急行電鉄空港線の好調ぶりだ。2014年度の営業係数は44.5であり、今回試算した大手私鉄の路線中、唯一の40台を記録している。

好調の原因は92億5484万円と、京急全線の収入全体の805億3275万円に対して11.5%を占める空港線の収入だ。営業キロ6.5kmの空港線の1営業キロ当たりの収入は14億2382万円と、泉岳寺―浦賀間を結ぶ営業キロ56.7kmの本線の11億4693万円を上回る。大手私鉄全体を見回しても、東京急行電鉄東横線の21億9459万円、同じく田園都市線の18億3763万円に次ぐ数値だ。

これに対して費用は京急全線に対して旅客人キロでは4.3%の2億6772万人キロ、営業キロでは7.5%の6.5kmから41億2290万円と試算されたため、利益は51億3194万円となった。京急は空港線の天空橋―羽田空港国内線ターミナル間3.2kmに対し、通常の運賃のほかに170円の加算運賃を徴収している。同社によると、2014年度の加算運賃の総額は47億7800万円と、収入の実に51.6%だ。

実を言うと、空港線で得られた利益は1998年11月18日に開業した天空橋―羽田空港国内線ターミナル間3.2kmの建設費の償還などに充当されるため、京急の懐にはあまり残らない。同社によると、2014年度の償還額は37億7700万円に上る。加えて、羽田空港の施設使用料や建設費の支払利息などとして11億6500万円が費用に上積みされるので、現実の利益はいま挙げた償還額などを少々上回る程度にまで下がるかもしれない。

井の頭線と瀬戸線の共通点

続いて注目したいのは、2014年度にいずれも60台の好調な営業係数を記録した京王電鉄井の頭線(営業係数の試算値は63.2)、名古屋鉄道瀬戸線(同62.2)の両通勤路線だ。全線に対する旅客人キロと営業キロの比率は井の頭線が15.0%と14.5%、瀬戸線がどちらも4.6%であるのに対し、収入の割合が井の頭線では20.5%、瀬戸線では6.4%と上回っているためにこのような結果が得られた。

井の頭線、瀬戸線に共通して見られる特徴は、旅客の平均乗車キロが短いため、営業キロと比べて割高な初乗り運賃をより多く得ているという点だ。旅客1人1km乗車時の収入は井の頭線が16円、瀬戸線が17円で、京王全線の10円、名鉄全線の12円をともに大きく上回っている。

他方で営業係数が最も悪かった路線は1770.9を記録した京成電鉄の東成田線(営業キロは7.1km)だ。この路線の収入は6975万円と公表され、営業キロ1km当たりの収入は982万円にすぎない。その反面、費用が12億3514万円と求められた結果、大手私鉄ワースト1位の営業係数となっている。


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