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5月14日、エルサレムに設置した米国大使館の除幕式に参列したイヴァンカ・トランプ氏(写真:REUTERS/Ronen Zvulun)

中東情勢を大きく左右する「中東和平(イスラエルとパレスチナの関係)」と「イラン核開発」に対して米トランプ政権が取った大胆な行動が、国際社会に大きな波紋を投げかけている。

本稿では、日本への影響はどのようなものなのか、そして日本政府はどのように対応するべきなのか、について考えていきたい。

イランとの間でようやく達成できた合意から離脱

まずトランプ政権が何をしたのか、をトレースしておこう。

5月8日、トランプ大統領は、「イラン核合意」(包括的共同作業計画)から離脱し、合意前に米国が課していた制裁はすべて復活すると表明した。

この核合意とは、前後10年以上の困難な交渉を経て2015年7月、米英仏独中ロの各国と欧州連合(EU)がイランとの間でようやく達成できた合意であり、イランは、核兵器に転用できる高濃縮ウランや兵器級プルトニウムを15年間は生産しないことなどが内容になっている。

この発表に対し、菅義偉官房長官は5月9日午前の記者会見で、「核合意の維持に大きな影響がでるとすれば残念。わが国としては、国際的な核不拡散体制の強化と中東の安定に資するこの核合意を引き続き支持しており、今後も核合意の維持に向け関係国による建設的な対応を期待し、緊密に協議を続けていきたい。今回の発表が及ぼす影響などを注意深く分析し、情勢を注視していきたい」とだけコメントした。河野太郎外相の談話も同様の内容であった。

「日本は核合意を今後も支持する」と明言したことは積極的に評価できる。しかし、核合意が維持されるかいなかだけが関心事ではない。日本がどのような影響を受けるかということも大きな問題だが、そんなことには一言も触れなかった。


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