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こうなると、「下手にリスクなど取らずに、黙って米国債を買っていればいい」と考える市場参加者が増えてくる。そうなると、新興国市場に向かっていた資金がドルに戻っていく。すでにアルゼンチンペソ、メキシコペソ、トルコリラなどの通貨は対ドルで下落している。5月8日には、アルゼンチンがIMF(国際通貨基金)に支援を要請した。G20議長国が資金流出でお手上げ、というのも前代未聞だが、金融不安の際に「アルゼンチン・タンゴ」が最初に流れてくるのはよくある展開だ。

なんとなれば、新興国には「輸入も対外債務も大部分がドル建て」という国が少なくない。ドルが強くなって自国通貨が減価した場合、支払いや返済の負担が重くなるのは当然のこと。今頃になって慌てふためく方が間違っている。

世界的な敏腕ストラテジストの未来予測とは?

とはいうものの、米国経済の金利上昇は「いつかは来るだろう」と言われつつ、インフレなき景気回復という「適温相場」があまりにも長く続いてきたので、すっかり警戒を怠っていた、というのは人間心理としてありがちなことだ。起きてほしくないことは、誰だって考えたくはない。真面目な話、筆者だってそうだ。

「久しぶりに新興国市場について勉強しなくては」、と思っていたところに、うってつけの新著があった。シャルマの未来予測?これから成長する国?沈む国』だ。著者のルチル・シャルマは、長年、モルガン・スタンレー社の新興国投資専門家として成功を収めてきたアナリストだ。

筆も達者で、前作『ブレイクアウト・ネーションズ』(ハヤカワ・ノンフィクション文庫)ではBRICsブームの終焉を予測し、「新興国投資は選別の時代に入った」と鋭いところを見せている(ちなみに同書の解説は筆者=吉崎が寄稿している)。

そのシャルマが2016年に出版した”The Rise and Fall of Nations”を、どこかが翻訳してくれないかな?と思っていたら、ほかならぬ東洋経済新報社さんが手掛けてくれた。先月くらいから書店に並んでいる。「これから成長する国、沈む国」を判定するための10の基準を紹介しているのだが、その考察がいちいち面白い。


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