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「コミュニケーション」と「コミュニティ」という2つの「コミュ」不足という観点から、中高年男性は孤独に陥りやすい現状について、拙著『世界一孤独な日本のオジサン』の中で、掘り下げたところ、多くのメディアから取材をいただいた。「男性は仕事以外で何を話していいかわからないところがある」という40代の大阪出身の記者いわく、「子どもの時、周りのおっちゃんたちの話題といえば、『タバコとクルマ』だった。『最近、何吸ってんの?』『何乗ってんの?』といった感じでね」。しかし、最近は喫煙者も減り、クルマ談義に花を咲かせるオジサンもあまり見掛けることはない。

この男性同様、思い悩む人は少なくないだろう。次々と言葉の「翼」をもがれ、「モノ言えば唇寒し」オジサンたち。「雑談力」の本が飛ぶように売れ、一言一句、何を話すのかを解説するマニュアル本がウケている背景には、こうした事情もあるのかもしれない。

元来、「喋(しゃべ)る」とは口数多く話すことを意味し、口へんに木の葉の象形文字がくっついたこの漢字は、葉っぱのように薄っぺらい話を延々と話す、ということに由来するらしい。男性には、無駄な「おしゃべり」は不得手という人も多い。というのも、話すこと自体が「目的」であることも多い女性に対し、男性にとって「コミュニケーション」は、「目的を達成するための『手段』」であるケースがほとんどだからだ。そうした男性たちにとっては、昨今の価値観の変化は、さらなる手かせ足かせとなって、重くのしかかる。

ひたすら褒め合う会話はまねできない

たとえば、女性同士のおしゃべりの潤滑油である「褒める」という行為。女性同士の会話を聞くと、ひたすら褒め合っている。「それいいね」「かわいいね」「すてき」「さすが、センスいいね」。お互いを肯定し、承認し合う。

一方、日本の男性の場合、褒められたいのは一緒だが、褒めるのはあまり得意ではない印象がある。気の毒なのは、異性を褒めようとすると、同じ言葉でも女性は許されるが、男性の場合は問題になりやすいことだ。最近は、髪や服装を褒めただけでも「セクハラ」と訴えられかねず、萎縮せざるをえない部分はあるだろう。コミュニケーションの基本であるあいさつでさえ、女性が子どもに話しかける分にはそれほど問題にはならないが、男性の場合は「不審者」扱いされることさえある。

女性にとって、会話をスムーズにするもう1つの潤滑油は「共感」だ。「ひどい」「かわいそう」「許せない」「悲しい」……。女性のほうが会話の中で、はるかに「感情ワード」を使うことが多い、ということは研究でも明らかになっている。1990年代にベストセラーとなった、米ジョージタウン大学のタネン教授の著作『You Just Don't Understand』(邦題:『わかりあえる理由 わかりあえない理由―男と女が傷つけあわないための口のきき方8章』)によれば、「女性はラポール(共感)トーク、つまり、社会的所属と感情的つながりを重視するコミュニケーションスタイル、一方の男性はレポート(報告)トーク、感情を交えることなく、情報を交換することに主眼が置かれている」という。


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