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 それから何日かして、彼女から手紙が来ました。「…絵本を見て、私は自分の中にしまいこんでいた思いに気付かされました。でも、その後、今度はなっちゃんのお母さんの言葉が耳に残りました。私は自分を見てくれない寂しさだけを募らせていたけれど、母も、私をだっこしたかったんじゃないかと…」

 絵本を通し、Sさんは自分自身に向き合い、対話しています。そして、「育てられる者」としての自分から「育てる者」となる自分へと心を成長させています。

 子供が「だっこして」と求めるのは、甘えても良いと思える人がそこにいるからです。家族の看護や介護、貧困や虐待、親の過重労働など、子供たちが育つ場がさまざまである中で、「だっこして」を我慢している子供がいます。と同時に、「だっこしたい」を我慢しなければならない親もいます。「だっこして」と「だっこしたい」が保証される社会や国であることを願います。(国立音楽大准教授 林浩子)=次回は27日掲載予定



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