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さらに、同社は問題と向き合おうとせず、北朝鮮以上に不誠実なコミュニケーション方針を採用した。新法が施行される前日の6月14日、同社のネイサン・ブレチャージク共同創業者兼CTOは、東京で記者会見を行い、同社の存在感を日本に示した。が、会見にもかかわらず、記者からの質問は一切受け付けず、泊まるはずの宿を突然失った何万人もの観光客の懸念に対処しようとはしなかった。

それどころか、北朝鮮のプロパガンダに匹敵する口調で、6月15日は「日本のシェアリングエコノミーの夜明け」となるだろうと誓ったのだ。ブレチャージクCTOは「今後数カ月で日本のホストを新たに何万人も増やす取り組みを行っている」と主張したが、どう考えても無理だ。6月8日時点の登録件数はわずか1134件なのだから。旅行業界の専門家の話では登録件数は結局、数千件にとどまるらしい。

ブレチャーチャイクCTOは日本国内でビジネスの「保証人」となってくれそうな「パートナー企業」(カルチュア・コンビニエンス・クラブやANAホールディングスなど)を、会見のステージに上げた。CCCの創業者である増田宗昭氏は1980年代頃からホームシェアリングビジネスをやりたいと考えていた、と話した。

だが、実際は夜明けからは程遠い。京都数カ所に物件を所有するある民泊オーナーは、登録申請時の雰囲気について魔女狩りのようだったと話す。「すべての郵便受けに警察、消防署、市からの手紙が入っていた。警察官は通りをパトロールして違法な民泊が行われていないかチェックしている。一方で市役所はドアが不適格だとか、庭がないなどというばかげた理由で申請を受け付けてくれない。日本は民泊ビジネスをぶち壊している」。

リーマンショック以降、シェアリングエコノミーは世界的な潮流になっている。が、日本だけは完全に取り残されている。安倍晋三政権は「生産性向上改革」を掲げているが、本当に改革を推し進めたければ、既存のリソース(アパート、車、自転車など)を活用したシェアリングエコノミーの概念を受け入れるべきだ。

6月14日、エアビーのソーシャル・イノベーションの担当者、キャメロン・シンクレア氏は「10年後、日本の空き家軒数は400万戸になると言われていますが、政府はどうするつもりなのでしょう?」と指摘。カーシェアリング大手ウーバーは、日本では今やフードデリバリー会社に成り下がってしまった。日本政府の厚意によって同社は2つの辺ぴな村でサービスを試験的に行っている。エアビーも同じ運命をたどることになろう。

今回の件で「負ける」のは誰か??すでに観光客は影響を受けている。現時点においても、観光庁は今回の件で宿がキャンセルになった観光客に対する謝罪などを行っていない。観光庁の肩を持つとするならば、同庁は今回日本人の苦情などに対処するために規制を設けたといえる。


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