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「天下の台所」大阪で独自のカレー文化が生まれた理由とは?(写真:shiii/PIXTA)
カレーが日本人の「国民食」と言われてから久しい。が、今や日本人は小麦粉ベースのルーが主体となったいわゆる「カレーライス」から、さらっとした食感の南インド系のカレーや激辛のタイカレーまで幅広い種類のカレーを食すようになっている。こうした中、近年話題となっているのが「大阪スパイスカレー」なるものだ。大阪で独自のカレー文化が生まれた背景には何があるのか。『パクチーとアジア飯』著者の阿古真理氏が探る。

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大阪スパイスカレーとは、1992年にミナミのアメリカ村で開業したカレー屋「カシミール」で産声を上げ、2000年代に入って大阪で出す店が増えた新しいタイプのカレーだ。日本人が営むカレー屋が独自に調合したスパイシーなカレーで、ご飯と合わせる、出しを使うといった和テイストに特徴がある。豊かな個性は、店主の多くが副業としてカレー屋を営んでいるところにもある、と言われている。

辛いカレーが注目されたのは1980年代

2008年頃から地元関西で、2011年頃から東京でも紹介され、ここ2、3年ブームとなっている。最近は、「旧ヤム邸 シモキタ荘」など、東京に進出する店が増えていることもあり、「スパイスカレー」という新しいカレーのジャンルができつつある。

スパイシーなのにあっさりした味は、新しい感覚だが、ご飯と合わせるせいか、昔からなじんできたような味わいでもある。刺激的だが、いくつもの味の層が重なっているので、辛さだけが立つわけではない。旨味も強い。もしかするとこれは、新しい時代のスタンダードになるカレーかもしれない。

なぜ大阪で、そんな新しいカレーが生まれたのだろうか。

日本でスパイシーなカレーが注目された最初は、1980年代半ばのこと。1984年のカラムーチョ発売など、トウガラシを多用した食品が次々と発売されて激辛ブームが盛り上がり、1986年に「激辛」は、新語・流行語大賞の新語部門銀賞に選ばれている。辛さの段階を選べるカレー屋が人気となり、ナンにつけて食べるスパイシーなインド料理のカレーも流行し始めた。

当時、日本に定着していたカレーライスは、どちらかといえばマイルドで、ルウの小麦粉が多いとろみのあるものだった。インドカレーは、スパイシーでどちらかといえばサラサラしている。辛いだけではないスパイスの複雑な味や香りにハマる人は多かったと思われる。

インド料理のカレーに親しむ人が大幅に増えたのは、2000年代に入ってから。2000年問題がきっかけで、インド人IT技術者が大勢日本に移り住むようになり、それを追うように各地でインド料理店が増えたのだ。NTTタウンページの調査によると、東日本・西日本のインド料理店の軒数は、2007年から2017年までの間になんと約7倍になった。家の近所にインド料理店が1軒以上ある、という人も多いのではないだろうか。


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