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「できる親」の証しとして、子どもを有名中学に合格させたいと思う欲求が強まるのも無理はありません。もはや子どものためでなく、自分の見栄のために、子どもに勉強を強いるのです。

こういった状況が教育虐待に拍車をかけているとも考えられます。

ダークサイドに堕ちていないかセルフチェック!

第一志望校の入試本番前日に、入試問題をこっそり見せてもらえると言われたら、それを見るでしょうか。子どもに見せるでしょうか。ちょっと真剣に考えてみてください。

答えがYESなら、その人はすでに「中学受験のダークサイド」に堕ちてしまっている可能性が高い。

本来の学力では入れなかった学校に仮にズルをして合格しても、入学後に苦しむのは子どもです。またもし、合格するに十分な高い学力をすでに持っているのにズルをしたのなら、「合格」が自分の実力なのかズルのせいなのかわからなくしてしまう意味で罪が重い。子どもはずっと後ろめたさを感じながらその学校に通わなければなりません。そんなのは、不幸以外の何物でもありません。

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SNSに「○○塾の月例テストの予想問題をこっそり教えます」というような内容の広告が表示されることがあります。予想問題が当たってそのときの月例テストでいい点数がとれたからといって何の意味があるのでしょうか。そのような広告は中学受験のダークサイドへの誘いにほかなりません。一切無視することをおすすめします。

中学受験勉強の目的は、どんな手段を使ってでも第一志望に合格することではなく、定めた目標に対して努力を続ける経験を積むプロセス自体のなかにあります。さらに、どんな結果であれそれを最終的には前向きに受け入れ、人生の新たな一歩を踏み出す姿勢を学ぶことにあります。

つまり、自分の努力で自分の人生を切り開き、仮に結果が100%の思いどおりでなくても 、腐ることなく歩み続けることのできる人になるための経験なのです。12歳にして「生き方」を学ぶ機会なのです。

おおたとしまさ 教育ジャーナリスト

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Toshimasa Ota

「子どもが“パパ〜!”っていつでも抱きついてくれる期間なんてほんの数年。今、子どもと一緒にいられなかったら一生後悔する」と株式会社リクルートを脱サラ。育児・教育をテーマに執筆・講演活動を行う。著書は『名門校とは何か?』『ルポ 塾歴社会』など80冊以上。著書一覧はこちら

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