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小野塚:そう、そこが仕掛けですよね。

中島:経験を積んだ東大の先生方に、もう一回改めて、「存在をどう語りますか」などと正面切って聞ける。こんな楽しいことはないわけです。バカな問いを発することを通じて、どうやって新しい学問の場所を共に作り上げていくのかを追求することは、単に学問の場所だけで重要なのではなくて、それが社会の問いと連動するし、世界と連動することでより重要になります。この本はそういったことを目指したという思いが、後からしてきました。

大学は広く開かれているべき

小野塚:高校生や大学の学生さん、さらに大学院の学生さんでもいいのですが、こういう人たちがこの本を読んだ場合に何を感じてくださるだろうか。ここがわたしはちょっと気になっています。高校生や大学生、そしてビジネスパーソンの方々が、「心の語り方」とか「倫理の語り方」とか、こういうテーマを受け止められるかどうか。林さんのご意見をぜひ聞きたいなと思うんです。

林竜也(はやし たつや)/ユニゾン・キャピタル株式会社パートナー。東京大学法学部卒業。1991年ゴールドマン・サックス証券会社に入社し、企業金融に携わる。1998年投資部門ヴァイス・プレジデント。同年10月ユニゾン・キャピタル株式会社を設立、パートナー。東大EMP第1期生でもある

:EMPというのは、大学と社会の境界面に面白い装置を作って、非常に実験的な形で東大の持っている知をこちらにアウトプットしてみるという、そういう場でもあります。それが10年を経て、こういうフォーマットができるところまできたと。

これを続けることによって、みんなの間での共同作業のようなものが出来上がってくる。大学の先生方が実はどんなことを考えていて、どんなことについてもがいているのかが見えてくる。それぞれの先生方の研究分野が一見ものすごく違っているように見えても実はけっこう共通したテーマの中で、「それがわからない」「そこが難しい」というところがあって、そこが一番、話が盛り上がります。

そういう大学での知のあり方みたいなものは、確かに今、これから大学に入ろうとする高校生なんかが、やはり一度体験してみる価値がすごくあると思います。繰り返しになりますが、先生方がおっしゃっていることの中身がわかる、わからないはもはやどうでもいい。そういうことではなくて、この生身の先生方のこの語り合いを体感することに意義があるということだと思うんですよ。

これから大学に入ろうとする高校生も中身がわからなくていいのであれば、早い時期に読み通せば、なるほど大学ってこういうことになっているんだということがわかります。この本は、若者、そしてビジネスパーソンにも、大学の持っている窓、社会に対する窓としてすごくユニークな形で機能すると思います。

小野塚:高校生や大学の中にいる学部の学生さんも、やはり社会の一員たる人間であって、このフォーマットはそういうあらゆる人に対して開かれているというか、読んでもらうことを期待できるものだとわたしは思っています。

座談会というのは、全部わからなくてもいいんです。座談会の中のどこかある問答、あるやり取りを聞いて、ああ、なるほど、この人たちはこういうことをこういうふうにやり取りしているんだなという、その面白さというのが伝わればいい。


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