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東南アジアもフィリピンやインドネシアなどは多くの移民労働者を中東地域に送り出しており、人的な交流は盛んだ。東南アジアで筆者がフムスに出会ったのも、こうした事情がある。フムスなどの中東料理が世界的にブームになる中、日本にその流れが伝わりにくかったのには、人の行き来が大きく影響している。中東料理の魅力的な世界を知っていたのは、中東駐在経験者や一部の旅行者、欧米で中東料理を味わった人たちに限られてきた。

だが、日本人はもともと好奇心が旺盛で貪欲に各国の食文化を取り入れてきた。日本も労働力不足から事実上の移民政策に舵を切り、人的な交流も活発になりつつある。インバウンドの盛り上がりや2020年のオリンピック、2025年の大阪万博も追い風だ。イスラム教徒向けのハラルフードなどは、一段と注目を集めることになる。こうした社会情勢の変化や相次ぐ巨大イベントによって、日本でも一気に中東の食文化が広がる可能性もある。

中東料理で豆が重宝される理由

クックパッド編集部のニュース担当、植木優帆さんは「海外の豆が最近、スーパーでも手軽に手に入るようになってきた。特にひよこ豆は輸入が急激に伸びており、この豆を使った料理の代表としてフムスがある。ニューヨークではフムス専門店が増えており、すでに世界的なブームだ。中東料理は野菜や豆を多く使い、健康志向とも合致している。日本でも広がっていくだろう」と分析している。

中東料理が世界で受け入られているのは、健康志向の高まりがある。イタリアや南仏料理など地中海周縁地方の料理の系譜を引いており、オリーブオイルやトマトなど健康的な素材を多用する。中東料理は、ひよこ豆などの豆類を積極的に使うことも特徴。レンズ豆やインゲン豆、そら豆は欠かせない素材だ。

中東諸国は、湾岸産油国を除いて、豊かな国ばかりではない。安価で腹持ちのいい食材として豆類は、民衆の胃袋を支えている。特にひよこ豆は、東部地中海沿岸地方(レバント)を代表する料理の材料であり、レバノンやシリア、パレスチナ、イスラエル、ヨルダンなどの料理に多く登場する。タンパク質や食物繊維を多く含み、鉄分やカルシウム、銅、マンガンなど骨の健康に必要なミネラルも豊富だ。

セレブが好んで食べ、スーパーフードの呼び声も高い。ゆでてペースト状にした同名のフムスという前菜や、砕いてスパイスとともに揚げたファラフェルは、ビーガンの飲食店など日本でも広がりつつあるが、中東料理の代表的な存在だ。

タヒーナも忘れてはならない。いわゆるごまペーストなのだが、日本のすりごまとはちょっと違う。中東のそれは、表面に大量の油が浮かび、色も優しいクリーム色だ。鉄分やカルシウムが豊富。フムスのほか、ナスのペースト料理であるババガヌージに使われたり、お菓子にも使われたりしてアラブ料理には欠かせない食材である。インターネット通販で入手可能だが、日本のスーパーで売っている白ごまペーストで代用可能だ。


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