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今年7月、JR東日本が発表した「変革2027」では、ヒト・モノ・カネに情報を加えたインフラの再構築、サービスの革新など鉄道事業の新しい方向性を打ち出した。計画には抽象的な概念が並んだが、その中に盛り込まれたのが、ドライバレス運転だった。

すでに国内では、ゆりかもめ(東京都)やポートライナー(兵庫県)など、新交通システムで自動運転が実現している。現在、JR東日本でその検証が最も進んでいるのが、最大の幹線である山手線だ。

環状線である山手線には、新しいシステムを導入しやすい。自動運転なら列車をフレキシブルに増減便しやすく、朝夕のラッシュ時の対応が容易になる。そして1日当たり150人近い運転士を削減できることになる。

山手線では3月時点で29駅中24駅にホームドアを設置、今後全駅に広げる。車両についても、ホームドアに合わせて自動停止するシステム(TASC、定位置停止装置)を導入済みだ。12月末には自動列車運転装置による走行試験も行う。

むろん、既存路線を自動運転化することは簡単ではない。駒込─田端間に1カ所だけ残る踏切の廃止をはじめ人の侵入を防ぐ措置や、路線・列車へのカメラやセンサー設置など、どれぐらいの投資が必要かもまだわからないという。ただ、完全な自動運転に至らなくても、こうした取り組みが、より少ない要員での運行体制につながることは間違いない。

得永執行役員は「運転士が減っていくことに対応するのが主たる目的ではなく、中長期的な視点で、安全性の確保から見ても技術的に確立しておきたいということ」と断りつつ、「結果的に少ない人数で運行できるし、ヒューマンエラーも減らせる」とその意義を語る。

コアの鉄道事業のあり方を大きく変えようとするJR東日本。すでに駅業務ではグループ企業への業務委託を増やし、定年退職後に再雇用された「エルダー社員」の活用が進んでいる。実際、社員数を見ると、単体では減少が続いているのに、グループ全体ではほとんど変わっていない。

今後は乗務員で同じ動きが出てくる可能性がある。特に社内資格である車掌は業務を外部委託しやすい。すでに一部の私鉄では、子会社に委託するケースも出ている。一方で国家資格である運転士については、自動運転化を進めつつ、要員効率化に取り組む──。

乗務員の勤務体系見直しが、改革加速のきっかけとなりそうだ。

木村 秀哉 東洋経済 記者

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きむら ひでや / Hideya Kimura

『週刊東洋経済』副編集長、『山一証券破綻臨時増刊号』編集長、『月刊金融ビジネス』編集長、『業界地図』編集長、『生保・損保特集号』編集長。『週刊東洋経済』編集委員などを経て、現在、企業情報部編集委員

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