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2017年ごろから、漫画を違法にアップロードして無料で読めるようにしていた「フリーブックス」「はるか夢の址」「漫画村」などの海賊版サイトが社会的に大きな問題となっている。

海賊版サイトの対策を議論する有識者会議「インターネット上の海賊版対策に関する検討会議」(知的財産戦略本部内に設置)では、対策としてサイトブロッキングを法制化するか否かを巡って意見がまとまらず、会議自体が無期限に延期されるという異例の事態となったことは記憶に新しい。

出版科学研究所の発表によると、単行本と雑誌をあわせた2017年の年間累計の漫画市場の推定売上額は、前年比2.8%減の4330億円と落ち込んでいる。漫画市場全体では、ピーク時である1995年では市場全体で5864億円の推定売り上げがあり、これと比較すると4分の3までに市場規模は縮小している。

単行本の売り上げについては、紙の落ち込みを電子版でカバーできているが、雑誌の売上減が著しく、全体として減少してしまっているかたちだ。その原因を海賊版による被害のみに帰することはできないだろうが、無料で漫画を読むことができてしまえば、有償で購入する人が減ることは明らかであり、コンテンツ業界としては大きな損害であることは間違いない。

任天堂の「画期的」なガイドライン

ここで漫画以外のコンテンツに目を向けてみよう。任天堂は11月29日に、「ネットワークサービスにおける任天堂の著作物の利用に関するガイドライン」を9カ国語で公表した。任天堂は、このガイドラインで、同社が著作権を有するゲームの動画や静止画について、個人かつ非営利の場合であれば共有サイトへの投稿を認めるという姿勢を明確に打ち出している。

ゲームは、RPGなどストーリー性のあるものであれば著作権法上は映画の著作物に該当するし、そうでなくてもゲーム内の静止画や動画はゲーム会社が著作権を保有している。したがって本来であれば、無断で同社のゲームの動画や静止画を共有することは、著作権の複製権、公衆送信権を侵害することになる。

もっとも、近年ではYouTubeなどで共有される「ゲーム実況動画」が注目を浴びており、ゲームを楽しんでいる動画が多くの人に閲覧されることによって、ゲームの存在やおもしろさが伝われば、コンテンツ業者にとってはとても効果的なプロモーションとなる。

形式的に著作権の侵害にあたるからといって、一律にすべて禁止するわけではなく、利用に関するガイドラインを示して、会社にとって望ましい利用を促進させることによって、コンテンツ提供者とユーザーの双方にとって有益な共存関係を構築することもできる。任天堂の試みは画期的であり、多くの支持を集めることだろう。


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