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もっと強制的に、あらゆるサイトをチェック対象にすることも不可能ではないだろう。だが、そうすることで「チェックが利きすぎる」ことになり、逆に正しいニュースが届かなくなる可能性もある。また、フェイクニュースを運営するようなところは悪知恵も働かせるので、こうした網のくぐり抜け方の情報を共有し、結局機能しない……という可能性は高い。残念ながら現状、Google News Labの最大の成果は「空振り」に終わっていると判断できる。

しかし、である。

グーグルがフェイクニュース対策に力を入れていること、信頼できるニュース制作の支援に力を入れていることは報道機関側も存分に利用すべきだ、と筆者は考えている。

前述のファクトチェック・ラベルも、「それがない」ことに価値を置くのではなく、「ラベルがある」ことに価値を置くよう、消費者側に周知していくというやり方のほうがいいはずだ。自ら「フェイクニュースではない」と主張するために、前向きにラベルを活用していくのだ。

?「経路での担保」を考えて報道を作る

また、地域ニュース支援やグーグルトレンド活用支援などは、報道機関だけでなく、むしろ独立系のジャーナリストにはありがたい存在になる。前者は自らの仕事を売り込む場・露出する場を増やすことにつながるし、後者は情報ソースの多様化につながる。

報道機関とグーグルの関係は、トムとジェリーのようなものだ。ネットによって顧客への玄関口を奪われ、大きな商売敵であるのは事実だ。大きなメディアの関係者であるほど、Google Newsにいい感情を抱いていないだろう。だが好むと好まざるとにかかわらず、人々はSNSとネットを窓口としてニュースに接している。

そのなかの大手であるグーグルが、報道の信頼性強化に協力してくれるというのであれば、その価値はうまく活かしていくべきだ。報道機関が報道を伝える唯一の経路であった時代ならともかく、今は経路が複数ある。経路の協力なしに信頼性の担保はありえない。

だからこそ、「経路でいかに信頼性を担保するのか」「人々に信頼性が担保されたニュースをどう届けるか」ということを考える必要がある。Google News Labの活動はそういうことなのだろう、と筆者は理解している。別にGoogle News Labは、そうした活動のための唯一の機関でもないし、現状大きな成功を収めているわけではない。だが、彼らの考え方を分析し、採り入れ、時には協力する態勢を作ることは必要なのではないだろうか。

西田 宗千佳 フリージャーナリスト

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にしだ むねちか / Munechika Nishida

得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に、取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞、『アエラ』『週刊朝日』『週刊現代』『週刊東洋経済』『プレジデント』朝日新聞デジタル、AV WatchASCIIi.jpなどに寄稿するほか、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。著書に『ソニーとアップル』(朝日新聞出版)、『漂流するソニーのDNA プレイステーションで世界と戦った男たち』(講談社)、『スマートテレビ スマートフォン、タブレットの次の戦場』(アスキー新書)、『形なきモノを売る時代 タブレット・スマートフォンが変える勝ち組、負け組 』『電子書籍革命の真実 未来の本 本のミライ』『iPad VS. キンドル 日本を巻き込む電子書籍戦争の舞台裏』(すべてエンターブレイン)、『リアルタイムレポート・デジタル教科書のゆくえ』(TAC出版)、『知らないとヤバイ! クラウドとプラットフォームでいま何が起きているのか?』(共著、徳間書店)、『災害時 ケータイ&ネット活用BOOK 「つながらない!」とき、どうするか?』(共著、朝日新聞出版)などがある。

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