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しかし、校長室で先生が話した言葉にショックを受けた。「『とてもいい子たちだったでしょう。でも、あの子たちは就職に困っているんですよ』と言われたんです。あんなにいい子たちがなぜ就職できないんだろうと、怒りとも悲しみともつかない気持ちに襲われ、言葉が出なくて……。絶対にうちで30人雇うという思いを強くしました」

2011年から障害者を毎年雇い入れ、今は39人が働いている。大半が特別支援学校の卒業生で、就労支援センターの紹介で採用した人もいる。仕事内容は「センター内の業務のすべて」と坂井さん。棚から商品を取ってくるピッキングをはじめ、棚への商品補充、梱包、検品、事務など幅広い業務があり、障害のあるなしにかかわらず同じ仕事に取り組む。制服や雇用形態、給与も同じだ。

周囲が少しずつサポートすればいい

そこには坂井さんの強いこだわりがある。「受け入れ体制を考えるにあたって、法定雇用率が高い数社を見学させてもらいました。すると、障害者は1カ所に集められ、数人の支援員の下で働き、楽しそうには見えなくて……。

だからうちは真逆をやってみようと、1人ひとりの個性や得意分野に合った職場に配置し、あえて支援員を決めずに周囲のスタッフたちが少しずつナチュラルにサポートすることにしたのです」

アスクル広報は「全国にある配送センターの中でも、福岡は障害者雇用が圧倒的に進んでいます。ここで培ったものを他にも広げていきたい」という(筆者撮影)

ミスマッチをなくすため、最大8週間の実習を行ったうえで、入社するかどうかを決定する。

学校が作るプロフィールシートでは学校や家庭での様子から趣味まで細かく教えてもらい、保護者とも面談を実施。実習にあたっては、3つのお願いをする。

1つ目は、自信を持てる人になること。「認められた経験が少なく、自信のない人が多いので、実習期間中にどれだけ成長したか自覚できるように意識しています。人と比べず、前日の自分に負けないことが大切。前日より1つでもできれば、自信がつく。小さな成功体験を積み上げてほしいと思っています」

2つ目は、考えるクセをつけること。「単にこれをやってと指示される仕事は面白くない。なぜするのかという目的を説明して理解してもらいます」

そのうえで3つ目は、努力の仕方を覚えること。「自分で目標を立て、そこに向かって努力する姿勢を育みます」。センターでは全員が1人ずつ1時間あたりの仕事量をできる限り数字で出している。そのため目標が立てやすく、成長も自覚できるというわけだ。


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