神戸製鋼所、日産自動車、東レ、三菱マテリアル――。日本を代表する名門企業で品質にかかわる不祥事が相次いでいる。日本企業の強みだった品質が低下したのか、日本のものづくりはどうなってしまうのか。
『現場力を鍛える』『見える化』(いずれも東洋経済新報社刊)などの著者で、現場力の実践的研究を行う遠藤功ローランド・ベルガー日本法人会長に、今回の一連の品質問題について聞いた。
――品質問題の連鎖が続いています。
今後もまだ出てくるのではないか。今回の品質問題には、個別企業だけではなく、日本のものづくりが抱える構造的な問題が背景にあると考えている。
私の考える構造問題には主に3つの要素がある。まず1つ目が「世界最高品質追求の圧力」だ。日本企業は世界最高の品質を追求して、海外企業との差別化を図ってきた。完成車メーカーからの厳しい要求によって、素材・部品メーカーが鍛えられてきたともいえる。顧客の要求はどんどん高まるが、とにかくそれに応えなければいけない。特に中国・韓国メーカーが追い上げてくる中で、より品質を求めるプレッシャーが強くなった。
日本企業が直面する「現場力の劣化」
では、その厳しい要求水準に応えるはずの生産現場はどうか。ここに構造問題の2つ目、「現場力の劣化」がある。日本の現場では、つねにギリギリの人数で回しており、非正規の従業員も多い。世代交代があるため技能継承も簡単ではない。
今回は品質保証に携わる人たちがデータの改ざんに手を染めていた例があった。以前なら現場には「品質の番人」とか「品質の鬼」と言われるような人がいて、「こんなもの絶対に出さん」と、不適合品を絶対に現場から出さなかった。そういう人が少なくなり、不適合品が現場で止まらなくなってしまった。失われた20年の中で、設備投資の抑制が続き、現場の意識やマインドも劣化してしまった。
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